CATCH THE RISING STAR #29
JTBに「顧客中心主義」を広げる若手マーケター、人流止まったコロナ禍で見えたもの【今井希氏】
企業におけるマーケティングの重要性が増す一方、「マーケターの仕事はAIに奪われるのでは」とも囁かれる昨今。そんな変革期に、マーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
Agenda noteでは一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。幼少期からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第29回はJTBの入社7年目、今井希氏。社内公募を使って法人営業からマーケターに転身した今井氏の原点には、人流が途絶える中で顧客の気持ちを考え抜いたコロナ禍の経験があった。旅行業から「交流創造事業」へと大きくドメイン転換を図るJTBで「カスタマーセントリック(顧客中心主義)」を広げていくべく、奮闘する若手マーケターに迫った。
Agenda noteでは一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。幼少期からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第29回はJTBの入社7年目、今井希氏。社内公募を使って法人営業からマーケターに転身した今井氏の原点には、人流が途絶える中で顧客の気持ちを考え抜いたコロナ禍の経験があった。旅行業から「交流創造事業」へと大きくドメイン転換を図るJTBで「カスタマーセントリック(顧客中心主義)」を広げていくべく、奮闘する若手マーケターに迫った。
「交流創造」のマーケターへ
―― JTBに入社されて現在7年目だそうですね。志望してマーケティングの部署に異動されたと聞きましたが、入社の経緯からお聞かせください。
元々、国際交流に興味があり、学生時代に1年間、ドイツに留学しました。留学先で各国の留学生と会話をしていると、皆、地元の魅力を誇らしげに語ってくれました。それを「自分もできるかな」と考えたとき、日本国内でも行っていない所はたくさんありましたし、もっと日本の魅力が語れたらいいな、埋もれた魅力を外に表現するのは楽しそうだなと思い、それができる会社としてJTBに行き着きました。自分がやりたい「交流」はここで実現できるかもしれないと思い、入社しました。

今井 希 氏
JTB グループ本社 ブランド・マーケティング・広報チーム(コーポレートマーケティング担当)
JTB グループ本社 ブランド・マーケティング・広報チーム(コーポレートマーケティング担当)
入社して4年間は法人営業を担当し、幅広い企業に対して社員旅行や研修旅行、プロモーションを企画し、実行していきました。その後、「人財交流制度」という社内公募制度を利用しビジネスソリューション事業本部(以下、BS事業本部)へ異動し、2024年4月からは新設されたグループ本社のブランド・マーケティング・広報チームに所属しています。
―― 営業を4年経験した後、マーケティングに異動するというキャリアパスは一般的なのですか? なぜマーケティングを志望されたのでしょうか。
今は若手が自分でキャリアを開発していくという方針が強化されて、キャリアパスも多様化してきていますが、まだ私の頃は過渡期でした。従来は営業で4~5年、ベーシックなスキルを積み、そこからさらに数年、営業で活躍してから異動するのが一般的でしたが、公募制度が拡充され始めた時期に私もちょうど4年目となっていて、募集職種の中にDXやマーケティングがあったのです。
それまで4年間、旅以外の領域も含めて営業を経験し、ジェネラリスト的な幅広いスキルを磨きながら、「もっと尖りたい」「自分だけのスキルを磨きたい」と思うようになっていました。データ分析をもとに、いかにお客さまに旅だけでなく「交流」の魅力を訴求していくかというスキルを磨くマーケティングが自分には合いそうだと思い、志願しました。
―― 2年経験されたBS事業本部と、現在のブランド・マーケティング・広報チームとでは、同じマーケティングでも大きく違いそうですね。
はい。BS事業本部は主に首都圏の法人向けソリューションを提供する事業部門ですが、その中でもマーケティングチームはJTBのBtoB領域全般(産官学)におけるマーケティング施策の実行を担っています。フィールドマーケターとして、2年間、マーケティング活動によって商談に繋げていく業務を担いました。
一方、今所属しているブランド・マーケティング・広報チームは、その名の通り、「ブランド」「マーケティング」「広報」の3機能が合わさった部署です。私は各事業部のマーケティング活動によるROIの可視化や、より良いマーケティング活動を進めるための仕組み、人財(※)といった体制をどう整えていくかという、コーポレートマーケティングに携わっています。
※JTBグループでは「人材」は「企業や組織の成長を支える財産となる大切なリソース」であるという意思を込め「人財」と表記。
―― 現在のお仕事は具体的にどんなことですか。
各事業部のマーケティングチームと連携しながら、全社的なMOps(マーケティングオペレーション)の環境構築を進めています。マーケティングキャンペーンの成果を可視化して、どう改善に繋げていくか。属人的にならず、スキルを標準化するにはどうするか。事業部とはまた別のフェーズでマーケティングの環境設計に取り組んでいます。インプットとアウトプットを同時に進めていくところが大変ですが、濃密でやりがいを感じています。
また、リブランディングに伴うマーケティング施策にも携わっています。JTBが「交流創造事業」へと転換を図っていることは先にお話しましたが、「旅」だけではなく「交流創造企業」へのパーセプションチェンジを図るキャンペーンを担当しています。具体的には、戦略カテゴリブランドであるMeetings & Events(M&E)のソリューション認知を図るための動画やWebページ制作、広告出稿などのマーケティング施策です。