日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #57

広告表現は特徴を伝えながらも、珍しい必要がある。見事に実現したサントリー翠のグラフィック広告

 

ハンバーガーにカビ。食品業界のタブーを美しく描く


 充分に珍しい表現で成功した海外の事例で今回ご紹介したいのが、米国でバーガーキングが実施した「The Moldy Whopper(カビの生えたワッパー)」です。この広告コミュニケーションは、2020~2021年のカンヌライオンズで、アウトドア部門グランプリなどを受賞しています。

ワッパーはバーガーキングの最もスタンダードなハンバーガーのこと。バーガーキングは全米2位の地位にあり、トップであるマクドナルドへの様々な挑戦で有名です。そのバーガーキングが、合成保存料をすべて廃止し、より自然なハンバーガーを提供する、とメッセージしました。この施策でも、声高には伝えていませんが、“VSマクドナルド”が強く意識されていると思います。
「The Moldy Whopper(カビの生えたワッパー)」事例ビデオ

 キャッチフレーズに、THE BEUATY OF NO ARTIFICIAL PRESERVATIVES(合成保存料無添加の美しさ)とあるように、防腐剤を使っていない自然な味わいが売りとなっています。しかしその分、日数が経てば当然カビが生えるわけで、その真実の経過を美しく撮影しました。28日目、32日目、36日目などと日数を付けながら、カビの生えた、普通であれば見たくないハンバーガーを美しく描き、メッセージを“充分に珍しい”形で伝えたことが評価されました。この表現を巨大な屋外看板で見るのは、かなり訴求力があると思います。

主にマクドナルドを念頭に、自分たち以外のファーストフードは合成保存料まみれだとも、暗にメッセージしていますね。

広告コミュニケーションに限らず、あらゆる表現やコンテンツは、今回取り上げたように、「意味ある内容×充分に珍しいこと」で成り立っていると考えることができます。

これだけ情報が過多である時代には、充分に珍しくないと誰も目に留めてくれないからです。そしてまた、表現ということに限らず、多くのビジネスの領域でも、何かプランニングをする時に、この「意味ある内容×充分に珍しいこと」を意識してみることは、かなり役に立つのではないかと感じています。
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