広報・PR #22
大谷翔平選手はなぜ企業から選ばれるのか? 広告起用の成功要因を多角的に分析
2025/04/07
ロサンゼルス・ドジャース所属の大谷翔平選手の動向は、広告会社および企業のマーケティング担当者の間で継続的な注目を集めている。2025年2月には大手下着メーカーのワコールや、大手コンビニエンスストアのファミリーマートとの契約が話題となった。
世界的な競技実績と誠実な人柄により、業種を超えた多様な企業から支持を得ている大谷選手の存在は、アスリートが企業ブランドにもたらす価値の高さを改めて証明している。大谷選手の広告起用が企業にもたらす効果を、海外市場への波及効果、独自のパブリックイメージ、スポーツリスクと契約管理の3つの視点から分析していく。
世界的な競技実績と誠実な人柄により、業種を超えた多様な企業から支持を得ている大谷選手の存在は、アスリートが企業ブランドにもたらす価値の高さを改めて証明している。大谷選手の広告起用が企業にもたらす効果を、海外市場への波及効果、独自のパブリックイメージ、スポーツリスクと契約管理の3つの視点から分析していく。
パブリックイメージとブランド親和性
企業が大谷選手に期待するのは、知名度や好感度だけではない。最大の魅力は、日本国内にとどまらず、北米をはじめとする海外市場への影響力である。メジャーリーグベースボール(以下、MLB)での活躍により、米国メディアやファン層から高い支持を獲得し、SNSを通じた情報拡散力も非常に高い。
この国際的知名度を背景に、テレビCMとオンライン広告を連動させれば、短期間で認知度を大幅に引き上げることが可能になる。広告効果を定量的に測定するには、ブランド認知調査、売上データ、SNSエンゲージメントなど、複数の指標を組み合わせた評価が有効となる。
大谷選手は競技成績だけでなく、「日本人選手によるMLB成功」「二刀流」という話題性がある。それらに加えて「謙虚で誠実な人柄」といった多面的な魅力をもっている。企業にとっては、こうした好印象とブランドの理念が一致するほど、広告起用による相乗効果が高まる。
さらに、報道やSNSを通じて継続的な話題性が担保されるため、単発の広告起用であっても、長期的にブランド想起を促すことができる。
スポーツリスクと契約管理
一方、現役スポーツ選手を広告に起用するときには、競技中の負傷や成績低下といったリスクが常につきまとう。特に露出のピークを狙って構成されたキャンペーンにおいては、計画の見直しが避けられない場合もある。
また、SNSによる情報の即時拡散が常態化した現代では、スキャンダルや誤情報がブランドに深刻なダメージを与える可能性もある。こうした事態に備え、契約段階でイメージ毀損時の対応条項や解除条項を明文化し、テレビCMの差し替えや広報戦略の見直しを迅速に行える体制を構築することが求められる。たとえ、選手本人の信用リスクが低くとも、周囲の関係者による突発的なトラブルは完全に排除できない。
海外広告展開における制度・文化的配慮
海外市場に展開する場合、各国の広告規制やSNS運用ガイドラインへの対応が不可欠である。たとえば、ステルスマーケティングへの規制強化に対応しないまま広告を展開すれば、逆に企業への批判を招くおそれがある。
そのため、制作の初期段階から現地の広告会社と連携し、文化的配慮や法的チェックを踏まえた表現設計が重要となる。
長期契約とブランド理念の統合
長期的な契約には、単なる売上への貢献を超えたブランド価値の構築が期待される。企業が掲げる理念や社会的課題への姿勢と、大谷選手の誠実なパーソナリティが融合することで、深いブランドロイヤルティの獲得が可能となる。
近年では、SDGsなどの取り組みをタレントと協働して推進する企業も増加しており、大谷選手のような好印象かつ信頼性の高い存在は、企業理念と親和性を築きやすい。逆に、契約後に企業側の倫理的問題が露呈した場合には、タレントイメージとの齟齬が表面化し、両者にとってリスクとなりうる。よって、価値観や社会への姿勢を共有しながら、共同で発信する体制が望ましい。