パナソニック コネクトから学ぶ「B2Bマーケティングの本質と成果を上げるための実践」 #02

多様化するB2Bマーケティング、なぜ安易なフレームワーク適用は“ミスマッチ”を生むのか?【パナソニック コネクト 関口昭如氏】

前回の記事:
「顧客・社会と共に、継続的に価値を創り、伝え、見届ける」B2Bマーケティングの本質【パナソニック コネクト 関口昭如氏】
 B2Bマーケティングの重要性は急速に拡大しており、現代のマーケターにおいても注目の的だ。特に、マーケティング機能が長らく優先課題とならず、営業経由の引き合い等に依存していた日本企業にとって、B2Bマーケティングによる企業変革は依然として課題である。しかし、B2Bマーケティングならではの効果的な方法論は学術的にも比較的整理されておらず、また一部分だけをとらえたピンポイントのものも多く、包括的な体系は皆無に等しい。また、B2B企業にてマーケティング組織やプロセスをつくったものの、その企業の期待値にあった成果を出せずに、その存在意義を明示できずに苦しんでいる企業も少なくない。

 多種多様なB2Bソリューションのビジネスを行っているパナソニック コネクトにおいて、デジタルカスタマーエクスペリエンスや事業マーケティングなどを総括している関口昭如氏がB2Bマーケティングの本質的な考え方や成功ポイントを解説する「B2Bマーケティングの本質と成果を上げるための実践」連載。第2回では、B2Bマーケティングの多様性に焦点を当て、画一的なアプローチでは捉えきれない、その複雑さについて考察し、理解を深めたい。
 

多岐にわたる「B2Bマーケティング」の実態


「B2B事業」と一口にいっても、ITソリューションやSaaSソリューション、医薬、原材料、化学品、商社、流通まで、その範囲は多岐にわたります。

 B2Bマーケティングにおいても、近年いくつもの書籍でフレームワークやその考え方が紹介されていますが、それらが自社のマーケティング戦略や自身のマーケティング実務に当てはまる話なのか、なんとなく自社の実態とはあわないなど、疑問に思う人も少なくないと聞きます。実際、そういう相談もときどき受けることがあります。

 たとえばSaaSソリューションのリード創出や、インサイドセールス連携などのセールスマーケティング(営業部門と連携した案件創出活動など)についてのフレームワークを紹介されても、原材料メーカーや化学メーカーの研究開発のマーケティング部門や新規市場向けのプロダクトマーケティングをしている人にとっては、「自分が取り組んでいる業務とのギャップ」が生まれているようです。SaaSソリューションのリード創出に特化したフレームワークは、原材料メーカーの研究開発部門にとっては、必ずしも有効とは言えません。

 なぜなら、商材の特性やターゲット顧客、購買プロセスなどが大きく異なるからです。たとえば、SaaSソリューションであれば、トライアル期間を設けて顧客に手軽に試してもらうことができますが、原材料の場合はサンプル提供や技術的なコンサルティングを通じて、じっくりと時間をかけて信頼関係を構築していく必要があります。

 このギャップの理由には、多くの要素がありますが、ここではこのギャップの要因を、次の3つの視点から掘り下げていきます。

 1. 商材・サービスの違い
 2. 顧客カバレッジの違い
 3. マーケティング業務の多様性
 

1. 商材・サービスによる違い


 製造業を中心に考えてみましょう。バリューチェーンの観点からみると、たとえばですが、8つの業界に分けることにしましょう。

 ① 原材料・素材・化学産業
 ② 部品・コンポーネント産業
 ③ 装置・設備産業
 ④ 製品製造業(完成品)
 ⑤ 物流・輸送産業
 ⑥ 流通・小売産業(商社なども含む)
 ⑦ IT産業
 ⑧ コンサルティング

 製造業以外にも、金融や不動産、医薬などもあります。多種多様な産業において、業界の商慣習や契約、購買頻度、派生需要(ニ次的、三次的需要)の影響、さらにそもそもの顧客の価値の捉え方なども違います。

 即座に購買まで判断される業界から、コンタクトしてから購買まで5年くらいかかることもある業界もあり、一口にリードナーチャリング(見込み客の醸成)といっても、戦略やプロセスが違うのです。

 顧客価値の源泉も、安定供給といったサプライチェーンの要素を重視する業界と、ITソフトウェアのようにヒューマンインターフェース(人間と機械が情報をやり取りするための手段や装置)やセキュリティを重視する業界では大きく異なります。顧客価値を提案するときには、これらの違いをしっかりと認識し、自社の業界に合った方法論を選択、適用、具現化することが重要です。

 意外に思われる人もいるかもしれませんが、消費財にもB2Bマーケティングが存在します。たとえば、食品メーカーがスーパーマーケットに対して行う販売促進活動や、アパレルメーカーが小売店に対して行う陳列方法の提案などは、B2Bマーケティングの一環ということもできます。

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