【読書の秋】視野が広がった、視座が上がった、視点が増えた1冊 #3

KDDI 合澤智子氏、はなまる 髙口裕之氏の「視野が広がった、視座が上がった、視点が増えた1冊」③

前回の記事:
クー・マーケティング・カンパニー 音部大輔氏、DAZN 笹本裕氏の「視野が広がった、視座が上がった、視点が増えた1冊」②
 昔に比べて短くなった感があるが、だからこそ貴重に思える「秋」。AGENDA Note.では恒例の読書企画として、ビジネスパーソンにトップマーケターが勧めたい本をご紹介する。今年のテーマは「視野が広がった、視座が上がった、視点が増えた1冊」。過ごしやすい季節を最大限活用して、自らの成長につながるお気に入りの本を見つけてみてほしい。
 

KDDI ブランド・コミュニケーション本部 副本部長 合澤智子氏


陰翳礼讃
谷崎潤一郎(著)、中央公論新社
 

 昭和初期に記された近代日本文学を代表する、谷崎潤一郎によるエッセイ。 この漢字四文字のタイトル、文豪、…などを見ると、どこか重々しく、億劫に感じるかもしれませんが、でも、この『陰翳礼讃』は、いまでも日本はもとより世界で、日本人の美学を伝える本としてたくさんの人に読まれているそうです。

 私がこの本に出会ったのは、au Design Project(※)の仕事をしていた時。日本人の感性や美意識、そしてデザインなどに興味がある人にとっては非常に参考になる本でした。

 何で今頃『陰翳礼讃』なの?

 この数年、仕事やプライベートで海外に行く時が何度かありました。その際、ほぼ8割くらいで「日本のアニメは素晴らしい!」と言われます。日本アニメ独自のストーリーテリング、キャラクターの魅力、クオリティの高さ、文化的要素などなど...アニメに無知な私は、外国の人から日本のよさを色々と教えてもらったのです。

 外を見ることで内の良さを知り、また、逆もしかり。

 私たち日本のよさ、日本人の感性を理解したいと思ったときに、おススメできる1冊です。

※au design projectは、KDDIおよび沖縄セルラー電話が展開する携帯電話端末のデザインを開発するプロジェクトです。2001年に始まり、2003年から2007年まで実施されました。国内外のデザイナーとのコラボレーションを通じて、数々の製品やコンセプトモデルを発表し、特に「INFOBAR」などのデザインが評価されました。
 

はなまる マーケティング本部CMO 兼 タネトシカケ 代表取締役 髙口裕之氏


上杉鷹山の経営学 危機を乗り切るリーダーの条件
童門冬二 (著)、PHP研究所
 

 同じ著者による小説版 上杉鷹山もあり、そちらのほうがより詳細に描かれていますが、本書は上杉鷹山が行った経営改革やリーダーシップの要素が分かりやすく解説されています。

 昨今、人的資本経営がよく取り沙汰されますが、今から200年以上前に「人の感情」を中心に、「日向のよそ者」ともいえる鷹山が米沢藩の経営難を改革した話です。

 私はあまり歴史には明るくありませんが、藩主であるリーダーが権力や見栄を背景にした運営を行い、民衆に負担や強制を強いる時代において、主体である「民の気持ち」を中心に据え、「プロセス」を大切にしながら「選択肢」を与え、「賛同と合意形成」を行いながら改革を進めたことは、まさに「組織は人なり」を実践した人的資本経営の原型ではないでしょうか。

 また一方では、十分な猶予と選択肢を与えた後に、多くの民意に背反する者には罰を与える「厳しさ」、改革を進めるにあたっていかに効率が上がろうとも間違った道筋は選択しないという「勝ち方へのこだわり」もまた、チームや組織に支持される人望につながるというリーダーの本質も学ぶことができる良書です。

※編集部注:記事内で紹介した書籍をリンク先で購入すると、売上の一部がアジェンダノートに還元されることがあります。

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