【読書の秋】視野が広がった、視座が上がった、視点が増えた1冊 #6
                        
        ネスレ 島川基氏、Sun Asterisk 木村紗希氏の「視野が広がった、視座が上がった、視点が増えた1冊」⑥
2025/10/31
 昔に比べて短くなった感があるが、だからこそ貴重に思える「秋」。AGENDA Note.では恒例の読書企画として、ビジネスパーソンにトップマーケターが勧めたい本をご紹介する。今年のテーマは「視野が広がった、視座が上がった、視点が増えた1冊」。過ごしやすい季節を最大限活用して、自らの成長につながるお気に入りの本を見つけてみてほしい。
 
ネスレ日本 常務執行役員 飲料事業本部長 島川基氏
『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』
ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ(著)児島修(訳)、辰巳出版

テーマに合う本は数々あったのですが、役職・仕事を問わず誰もが明日から活用できるという視点で選びました。
ハーバード成人発達研究の知見をもとに、「幸せな人生とは何か」を改めて問い直す一冊です。
膨大な被験者群の80年以上、二世代にわたる追跡調査から導き出された結論はシンプルで、「健康で幸せな生活を送るには、よい人間関係が必要だ」という一文につきます。だからこそ人生は複雑で、時に苦難を伴い、時間をかけて展開していくひとつのプロセスと言えます。
私が最も印象に残ったのは、「時間」自体よりもむしろ「注意(Attention)」こそが人生の質を決めるという指摘です。どれほど多忙でも、目の前の人や出来事に注意が向いていなければ、その時間は価値を生みません。脳に負荷がかかるマルチタスク化が進み、私たちは常に何かをする際に他のことを考えながら過ごし、「注意」して時間を過ごしていない。まさに現代人が直面している課題を的確についています。
注意をどこに向け、何に心を配るのかというのは本質的な示唆で、「リーダーとしての在り方」への問いでもあります。時間と注意をどう使うかは今すぐに行動に起こせることですし、また会社だけでなく家族や友人を含めたあらゆる人間関係にもすべて通じます。
視座を高め、他者とのつながりを再定義する契機となる1冊でした。
Sun Asterisk Business Designer 木村紗希氏
『選択の科学』
シーナ・アイエンガー(著)櫻井祐子(訳)、文藝春秋

社会人2年目、広告代理店の営業からクライアント付きプランナーに変わった頃、広告の「見る」「クリックする」といった小さな「選択」をどう動かせるのか悩んでいた私が出会ったのが、盲目のコロンビア大学教授シーナ・アイエンガー氏の『選択の科学』でした。
不確実な人生の中で、私たちは常に選択の機会があり、常にいずれかを選択しなければなりません。
本書ではさまざまな実験結果をもとに、人間は選択肢についてどう感じるのか、またどのように対処をするべきなのか、科学的な観点から選択という一点に切り込んでいます。
20年以上の実証研究に基づき、選択肢が多いほど負担が増えることや、おとり効果・プライミング(先行する刺激が後続の刺激に影響を与える効果)・周囲の影響、そして意志力が有限であることを、やさしく、しかし鋭く教えてくれます。
本書から仕事に関して学んだのは「選ばせ方を設計する」視点です。たとえば、選択肢は3~5つに絞ってカテゴリー化する、迷いを減らす初期設定や段階的開示を用意する、比較軸はひとつに絞って伝える、事前コミットやチェックリストで意志力の浪費を防ぐ、といった工夫です。
人は選択せずに生きていくことができない一方で、選択の自由を必ずしも肯定的に捉えていないのが印象的です。
自由を増やすより「選びやすさ」を整えることが、企画や提案の納得感を高め、成果にもつながるのだと実感しました。
最後にーー。意思決定に迷いがちな今こそ、「選び方」の質を上げるための1冊としておすすめします。
※編集部注:記事内で紹介した書籍をリンク先で購入すると、売上の一部がAgenda noteに還元されることがあります。




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