CATCH THE RISING STAR #30
ジョンソン・エンド・ジョンソンの若きマーケターが目指す生活者に寄り添うマーケティング 「コンタクトレンズといえばアキュビュー」が目標
2025/11/17
企業におけるマーケティングの役割と重要性が増す一方、「マーケターの仕事はAIに奪われるのでは」とも囁かれる昨今。そんな変革期にマーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
次世代を担う「ライジングスター」にフォーカスし、彼らの多彩な思考や行動を探ることでマーケティングの近未来を照射するAGENDA Note.の本連載。30回目となる今回は、使い捨てコンタクトレンズ リーディングカンパニーのひとつであるジョンソン・エンド・ジョンソンに転職して1年となる早川琴音氏を取材した。生活者がブランドそのものを意識することが多くないコンタクトレンズ市場において、高度管理医療機器ならではの厳しい制約の中で奮闘する早川氏が目指す「生活者に寄り添うマーケティング」とは。
次世代を担う「ライジングスター」にフォーカスし、彼らの多彩な思考や行動を探ることでマーケティングの近未来を照射するAGENDA Note.の本連載。30回目となる今回は、使い捨てコンタクトレンズ リーディングカンパニーのひとつであるジョンソン・エンド・ジョンソンに転職して1年となる早川琴音氏を取材した。生活者がブランドそのものを意識することが多くないコンタクトレンズ市場において、高度管理医療機器ならではの厳しい制約の中で奮闘する早川氏が目指す「生活者に寄り添うマーケティング」とは。
マーケティングの魅力に目覚め転職
ーー 早川さんは2024年秋にジョンソン・エンド・ジョンソンに転職されてきたと聞きました。経緯を教えてください。
国際系の学部を卒業し、新卒入社した日系美容メーカーでは海外事業部に配属されました。バリバリ海外出張する営業マンになるぞ、と意気込んでいたのですが、コロナ禍で海外に行くことはできず、新製品における海外販路戦略の立案を任されました。
「そもそも、どこに製品の価値を生かせる市場があるのか?」「どういう人に買ってもらえるのか?」。そんなことを考える時間がすごく多かったです。当時はマーケティングの知識はなかったので、広告会社の方などから3Cや4Pを教えてもらい、SWOT分析などは何度も書き直しました。最初は慣れなかったので大変な思いをしたのですが、次第に「この製品の魅力は私が一番詳しい」と思えるくらい自信がついて、どういう人や市場に対してであれば製品価値を感じてもらえるかという戦略を練るマーケティングの仕事が、すごく楽しいと感じたんです。
その後、ポテンシャルのある市場を見つけて無事に契約にこぎつけ、ひと区切りと思いました。マーケターを志してブランドマーケティング部に異動し、さらにダイナミックにマーケティングでビジネスを動かしたいと考え、ジョンソン・エンド・ジョンソンに転職しました。現在はコンタクトレンズブランド「アキュビュー」のコンシューマー向けコミュニケーション、主に広告関係のエグゼキューションを担当しています。
ジョンソン・エンド・ジョンソン ビジョンケア
ストラテジー&マーケティング本部 戦略マーケティング部 マーケティングアソシエイト
早川 琴音 氏
ストラテジー&マーケティング本部 戦略マーケティング部 マーケティングアソシエイト
早川 琴音 氏
ーー 前職でマーケティングの面白さを知り、より専門的にキャリアを積むために転職されたんですね。入社されて約1年ですが、印象に残ったプロジェクトはありますか?
2025年の年始から新年度にかけて展開した、主に10代のコンタクトデビューを応援するキャンペーンです。「デビューはアキュビュー」を合言葉に、新生活が始まるのを機に「ちょっと新しい自分になりたい」と思うティーンの皆さんの背中を押すことを目的とした施策のエグゼキューションを担当したのですが、本当にいろいろなことをさせていただきました。
たとえばティーン向けコミュニケーションで欠かせない縦型動画の制作進行、撮影の立ち会い、プレスリリースの執筆、キャンペーンページの制作、さらにATL施策と連動したBTL施策として、眼科や販売店に貼らせていただくポスターの制作進行など…。入社数ヵ月で右も左も分からない状態でしたが、必死に取り組みました。
ーー 成功のために工夫した点はありますか? また、結果はどうでしたか?
常に心がけたのは、気持ちのいいコミュニケーションと、一緒に仕事をする相手へのリスペクトでした。プロジェクトを進める中で実感したのは、マーケティング部門はすべての「ハブ」になるということです。サイトをつくるにも、ATLでのコミュニケーションで流す動画をつくるにも、ポスターをつくるにも、それぞれ異なる代理店とのコミュニケーションが必要ですし、社内でもデジタル、営業など他部門の方々との連携が必要です。皆さん、普段の業務と並行して協力してくれていることを忘れずに、リスペクトのある丁寧なコミュニケーションを心がけたことが、オンスケジュールで進めるためにもすごく重要だったと思います。
結果として、キャンペーンに対する嬉しいソーシャルボイスが数多く確認できました。「やりたいことをもっとやれるようになる」というストーリーに共感を寄せられ、お笑い芸人のヤーレンズさんにトレードマークのメガネを外して出演していただいたことにも「起用のセンスがいい」という声がありました。大変だった分、生活者の声として反応が返ってきてくれたのは、すごく印象に残りました。
ATL施策の効果としてティーンの第一想起が一定程度上がったことも確認できました。また、興味深かったのは、縦型動画の完全視聴率が想定よりかなり高く着地できたことです。若い人は少しでも「長い」と思うとスワイプしてしまう傾向がありますが、最後まで楽しくコンテンツを見てくれたんだと思うと嬉しかったです。
ーー 現在はどのような業務に取り組んでいますか? また、難しさを感じることはありますか?
現在は他社ブランドからのスイッチングを促すプロジェクトや、インフルエンサーを活用したプロジェクトに関わっています。
コンタクトレンズは、カテゴリーに対する消費者の関心が高くない商材です。「販売店ですすめられたから」「安いから」といった理由で、特にどこのブランドの製品かを意識せず買っている人が多いのではないでしょうか。私自身、昨年アキュビューの担当になるまで、小学生の頃から使っているコンタクトレンズがどこのブランドか、よく認識していませんでした。転職を機にアキュビューに買い換えることがなければ、目の健康について考える機会もあまりなかっただろうと思います。
またコンタクトレンズは、厳格な取り扱いが必要となるペースメーカーや人工関節と同クラスに分類される「高度管理医療機器」であることから、法規制などの厳しい制約を受けます。私は前職で美容機器やスキンケア製品を扱っていたので、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)や景表法(不当景品類及び不当表示防止法)については当然の知識や経験がありましたが、それらに比べても、コンタクトレンズはコミュニケーションの難しい商材だと感じています。
たとえば「うるっ」とか「ぷるん」といったオノマトペを使った表現や、エモーショナルな言葉を使える幅が限られています。できれば情緒的な表現も使って、製品の魅力をお客さまの心に届けたい思いがあるのですが、薬事部門などとすり合わせていくと、どうしても似通った表現に絞られてしまう。個性を際立たせるのが難しい中でどのように選ばれるかとなると、やはり価格や、広告に起用しているタレントさんのイメージが強く働きます。けれどマーケターとしては「アキュビューだからいいかも」と選んでいただきたい。それがやりがいであり、難しいところでもあります。




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