CATCH THE RISING STAR #32
「ファンダフル・ディズニー」手がけるオリエンタルランド若手マーケターが目指す「心の温度が上がる」マーケティング
2025/12/15
企業におけるマーケティングの役割と重要性が増す一方、「マーケターの仕事はAIに奪われるのでは」とも囁かれる昨今。そんな変革期にマーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
次世代を担う「ライジングスター」にフォーカスし、彼らの多彩な思考や行動を探ることでマーケティングの近未来を照射するAGENDA Note.の本連載。32回目となる今回は、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドで、オフィシャルパークファンクラブのコンテンツ開発を担う入社8年目の野村光歩氏にインタビュー。熱量高いディズニーファンのインサイトを丁寧に読み解き施策に落とし込みながら、野村氏が目指す「心の温度を上げる」マーケティングとは。
次世代を担う「ライジングスター」にフォーカスし、彼らの多彩な思考や行動を探ることでマーケティングの近未来を照射するAGENDA Note.の本連載。32回目となる今回は、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドで、オフィシャルパークファンクラブのコンテンツ開発を担う入社8年目の野村光歩氏にインタビュー。熱量高いディズニーファンのインサイトを丁寧に読み解き施策に落とし込みながら、野村氏が目指す「心の温度を上げる」マーケティングとは。
20年の歴史を持つファンクラブ
―― 入社の経緯を教えてください。
大学時代にマーケティングを勉強し、広告の研究サークルにも入って、戦略の立案や実際に企業へのご提案などもさせていただく機会がありました。自分やチームがつくった施策が消費者を動かす可能性があったり、反応をもらえたりすることがすごく嬉しいと思い、マーケティングを志しました。また、ダンスサークルやカフェのアルバイトを通して、誰かの「心の温度」を上げるコンテンツをつくる楽しさも知りました。そういった観点でオリエンタルランドの仕事に魅力を感じ、総合職として入社しました。

オリエンタルランド マーケティング本部 ロイヤルティマーケティング部 ロイヤルティマーケティンググループ シニアリーディングスタッフ
野村 光歩 氏
野村 光歩 氏
―― オリエンタルランドといえば就活ランキングで常に上位となる人気企業ですが、「ディズニーリゾートが好きだから」というのが一番の理由ではないところが興味深いですね。
もちろんディズニーリゾートは大好きです。ただ、就職にあたって重視したのは「それがないと生きられないわけではないけれど、あると幸せになれるものに携わりたい」という思いでした。オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾートは、ゲストとキャスト、さまざまなアトラクションやコンテンツ、スペシャルイベントなどが関係し合って「心の温度」を上げる瞬間が次々とつくりあげられます。私もそんなコンテンツづくりに取り組みたいと希望しました。
―― 入社8年目ということですが、どのような仕事をされてきましたか。
あくまで私個人の経歴ですが、入社するとまずキャストとしてパークで働く部署に配属されました。ゲスト対応やアトラクション運営、新しいキャストの育成といったスキルを磨き、時間帯の責任者であるスーパーバイザーも務めました。「イッツ・ア・スモールワールド」など3つのアトラクションを4年ほど経験したあと、ハロウィンなどのスペシャルイベントを企画・運営する部署に異動し、現在はマーケティング本部で「ファンダフル・ディズニー」というオフィシャルパークファンクラブのコンテンツ企画と調整・実行を担当しています。
ファンダフル・ディズニーは13歳以上の幅広い年代の方々に年会費を支払って入会いただいており、会員報、メンバーズカードなどの特典を受け取れるほか、会員限定グッズやショーを早く観覧できるチャンスがあるなど、会員の皆さんがより一層、東京ディズニーリゾートをお楽しみいただけるコンテンツを提供しています。
企画の際は、やはり会員の皆さんの声が一番大事ですから、ゲストが何を求めているかインタビューなどでお聞きした内容を踏まえ、「ファンクラブに入っているからこそ、より楽しむことができた」と思っていただける体験をつくれるように奮闘しています。
―― 印象的なプロジェクトはありますか? また、どんな点に難しさを感じますか?
ちょうど2024年11月に設立20周年を迎えたため、「ファンダフル・ディズニー20周年」を会員の皆さんと一緒に盛り上げる施策を企画・実施してきました。たとえば夜間に会員限定の貸切営業を実施するにあたって、会員の皆さんからの投票で決定した20周年のロゴがデザインされたペンダントライトを制作・プレゼントしたり、会員の皆さんを出迎えるフラッグをご用意したりと、20周年の特別感をどのように感じていただけるかチームのメンバーと議論を重ねて、準備を致しました。
私たちが提供する体験を実現するためには、グッズやメニュー、エンターテインメント、そしてアトラクションといった、パークでオペレーションを担うさまざまな部署との連携が不可欠です。多岐にわたる関係部署と議論や調整を重ねながら、ゲストに一番喜んでいただける体験を一緒につくり上げていくのが難しさであり、工夫のしどころです。
―― ファンクラブに入るほどロイヤルティの高いゲストとなると、ディズニーリゾートの楽しみ方もそれぞれ違いそうです。どのように体験設計をするのですか。
おっしゃる通り、楽しみ方はゲストによって違います。さまざまなゲストのインサイトを正確に把握するため、定期的に調査を行っています。より詳しく会員の皆さまを理解するために、会員のデプスインタビューを何段階かに分けて幅広く行っています。たとえば、どういう経緯で入会したか、どのようにパークやコンテンツを楽しんでいるか、ファンクラブに何を期待するか…といったことを伺います。性別・年齢・居住地といった属性の分布を考慮し、会員ではないゲストも含めて、インタビュー結果を幅広く比較・検証できるようにします。
深掘りしたインサイトに基づき「こんな体験があったら東京ディズニーリゾートをもっと好きになってもらえるはず」という施策を実行します。たとえばアトラクションや建物のバックグラウンドストーリーが好きで、そのストーリーを知っているとパーク内を歩いているだけで楽しいとおっしゃる方がいれば、そういったストーリーを担当する部署と連携し、夜間の会員限定貸切営業の際に、バックグラウンドストーリーなどを管轄する担当者と巡る特別なツアーを企画させていただきました。より深くディズニーを知り、楽しんでいただける機会になったのではと思います。
インタビューの結果はファンクラブ運営や20周年の施策に生かしたほか、ロイヤルティの高いゲストの方々のインサイトを把握し、施策に生かしたいという意図もあるので、他のマーケティング担当者や他部署にも説明し、全社的な顧客理解につなげていく機会も設けました。




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