新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #24
海外へ躍進するLDH。これまでの日本のアーティストにない、現地ファンを獲得した新たなアプローチとは
2025/12/23
日本の音楽・映画・ゲーム・漫画・アニメなどのエンタメコンテンツが、世界でも注目されることが多くなった昨今。本連載は、さまざまなエンタメ領域の舞台裏で、ヒットを生む旗手たちの思考をnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏が解き明かしていく。
今回、徳力氏が対談したのは、LDH JAPAN エグゼクティブストラテジストの石井一弘氏。音楽アーティストのマネジメント事業などを行うLDHは2022年からアジア進出を開始し、グローバル展開に注力している。
特にタイでは、同国の国民的なアーティスト兼プロデューサーとして絶大な影響力を持つラッパーのF.HERO氏が率いる音楽プロダクション「HIGH CLOUD ENTERTAINMENT」や、ライブ制作を中心に成長するエンタメ企業「4NOLOGUE」とパートナーシップを締結。LDHのボーイズグループであるBALLISTIK BOYZとPSYCHIC FEVERが現地のフェスやイベントに参加したり、2023年には現地のアーティストとのコラボレーション楽曲をリリースして主要音楽チャートの上位にランクインしたりと、快進撃を続けている。さらには、2024年にタイ最大のメディア・エンタメ企業GMMと合弁会社G&LDHを設立するなどタイでのビジネス基盤を着実に築いている。
前編では、LDHがタイをはじめ東南アジアの国々における展開をどのように成功させていったのか、その軌跡を詳しく聞いた。
今回、徳力氏が対談したのは、LDH JAPAN エグゼクティブストラテジストの石井一弘氏。音楽アーティストのマネジメント事業などを行うLDHは2022年からアジア進出を開始し、グローバル展開に注力している。
特にタイでは、同国の国民的なアーティスト兼プロデューサーとして絶大な影響力を持つラッパーのF.HERO氏が率いる音楽プロダクション「HIGH CLOUD ENTERTAINMENT」や、ライブ制作を中心に成長するエンタメ企業「4NOLOGUE」とパートナーシップを締結。LDHのボーイズグループであるBALLISTIK BOYZとPSYCHIC FEVERが現地のフェスやイベントに参加したり、2023年には現地のアーティストとのコラボレーション楽曲をリリースして主要音楽チャートの上位にランクインしたりと、快進撃を続けている。さらには、2024年にタイ最大のメディア・エンタメ企業GMMと合弁会社G&LDHを設立するなどタイでのビジネス基盤を着実に築いている。
前編では、LDHがタイをはじめ東南アジアの国々における展開をどのように成功させていったのか、その軌跡を詳しく聞いた。
東南アジアには大きな音楽マーケットがある
徳力 LDHは2022年からアジアに進出し、現地で着実に存在感を増していっている印象を受けます。そもそもどのような経緯でアジア展開に至ったのでしょうか。
石井 海外に進出する理由は、今後ますます国内マーケットが縮小していくからです。すでに15歳未満の人口は激減しており、エンタメ市場の規模はそれとほぼ比例します。実際にグラフを見ても、日本の15~34歳の人口と音楽マーケットの規模は、まったく同じ動きで縮小しています。また、日本のエンタメ市場にはK-POPも参入し、過密状況となっているのが現状です。
現在伸びているのは、「グローバルサウス」と呼ばれる東南アジアや中南米、アフリカといった地域の音楽マーケットです。僕らは2017年ごろから海外進出を試み、欧米を中心に展開を始めていましたが、さあこれからというタイミングでコロナ禍になってしまい、活動を断念しました。ただ、その頃から米国の企業では「これからはアジアの時代になる。アジアのZ世代攻略が課題だ」と言われていました。

株式会社LDH JAPAN
ミュージック本部エグゼクティブストラテジスト
石井 一弘氏
ミュージック本部エグゼクティブストラテジスト
石井 一弘氏
徳力 その頃から、アジア市場への注目が高まっていたのですね。
石井 はい。それで、僕らもコロナ後の戦略を見直した際に、やはり東南アジアに行くべきだと考えました。日本と東南アジアの国々は親密な関係ですし、東南アジア各国にはZ世代が合計約1億6500万人もいる。特に、ベトナム、フィリピン、インドネシアの3ヵ国は、2050年まで人口が増加していくと言われているので、ポテンシャルが高いと考えました。
徳力 社長のHIROさんが2022年の会見で話したのを聞いた覚えがあります。
石井 調べてみると、東南アジアの中でも一番エンタメ業界が成長している国がタイでした。そこで、まずはタイへの進出を決めました。その際に、タイのエンタメ業界で大きな影響力を持ち、政財界にも広いネットワークを持つラッパーのF.HEROさんと出会うことができたので、バンコクを拠点に進めていくことにしました。
徳力 F.HEROさんとは、どのように出会ったんですか。
石井 タイについていろいろリサーチする中で、LDHに合いそうなのはF.HEROさんだと考えました。そうしたら、たまたま知り合いの会社で働いていたタイ人の女性が、F.HEROさんと家族ぐるみで仲が良いことが分かって、紹介してもらったんです。
徳力 面白い。そういう運命みたいなことがあるのですね。普通にコンタクトを取ろうとしても、なかなか会えないですよね。
石井 絶対に無理でしょうね。タイでは、F.HEROさんにいろいろな人を紹介してもらいました。名刺を差し出して「LDHです」と言っても誰もピンと来ないのですが、EXILEやドラマ・映画シリーズの「HiGH&LOW」をやっている会社ですと言うと、みんな「おお!」ってなるんですよ。40代以上のタイ人は、昭和や平成のJ-POPを聴いてきていますし、東南アジアではコロナ禍にNetflixで「HiGH&LOW」を見ていた人が多くて。
徳力 アジア展開に注力する前から、実はすでにLDHの活動が届いていて、実際に現地に行ってみて初めてそのことに気づいたわけですね。
石井 そうですね。タイには日本企業がたくさん進出しているので、多くの日本人が住んでいることも後押しになりました。BALLISTIK BOYZとPSYCHIC FEVERの2グループでタイでの展開を進めていったのですが、その2グループがタイで成功できた要因は、現地の日本人コミュニティとF.HEROさんを含めたタイコミュニティの両方から協力を得られたことだと考えています。あと、何より、2つのグループのメンバーをタイに6ヶ月間も住まわせて活動させるという大胆な作戦が取れたことが大きいですね。普通はできないですよね。
徳力 なるほど、そうなんですか。
石井 これは10年以上前に聞いた話ですが、K-POPの戦略も、まずは現地のコリアンコミュニティのサポートを受けて、それを中心にファンを拡大していくというやり方だったそうです。あるK-POPグループが初めてロサンゼルスでライブをやったとき、観客は8割が現地に住む韓国人で、そこから3年かけて比率を逆転させ、現地に根付かせていったと。KCONができる前の話です。
徳力 そうなんですか。日本人アーティストが海外公演を行うと、観客が日本人ばかりだと批判されがちですが、むしろそこから頑張ればいいわけですね。




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