2026年マーケティング業界の展望 #03

トップマーケターが語る2026年の展望【岡本達也氏、馬渕邦美氏】

前回の記事:
トップマーケターが語る2026年の展望【山口有希子氏、西井敏恭氏】
 

AI活用とマーケター本来の役割で「未来に飛ぶ」決断を


岡本 達也 氏
味の素 執行役常務マーケティングデザインセンター長

 2026年はAIがマーケティング業務のど真ん中に実装され、成果が創出されてくるでしょう。効率化・作業代替中心から、新たな価値を創出するプロセスであるインサイト探索、提供価値仮説の構築、製品・サービスのアイデア拡散と収束、マーケティングリサーチなどに実装され、活用が本格化すると推察しています。

 課題は信頼性の担保でしょうか? このような環境になった時にマーケターは何をするのか、が問われることになります。私は、未来に飛ぶための「決断」、そしてマーケター本来の業務である生活者・顧客と生身で向き合うことがとても大切になると考えています。

 決断は、過去の事実から得られた判断に戦略仮説を加えて未来に飛ぶ仕事です。それは人間がやらねばならない大切なこと。また熱量をもって生活者・ユーザー・顧客と接し、対話し、共に体験し、共感を生み出すことも人間にしかできない大切なこと。

 生成AIをマーケティングプロセスに組み込んでスピードと精度を上げることはできても、未来に飛ぶ決断をし、熱量をもって共感を生み出すことができるマーケターを育てることはAIにはできません。そのような人財を生み出せるかどうか、が競争優位に大きく関わる時代になると思います。
 

マーケターは「AIと人をつなぎ、関係性の未来をデザインする仕事」へ


馬渕 邦美 氏
Xinobi AI 共同CEO

 2026年、AIはマーケティングにおいて「最適化の装置」から「理解する知能」へと進化する。

 ヤン・ルカン教授が示した世界モデルの潮流は、AIが統計的生成の段階を超え、人の行動や意図を「文脈として」把握する知能へと移行しつつあることを意味する。これは「マーケティングはAIに奪われるか否か」といった単純な議論では捉えきれない変化だ。

 この進歩により、広告・CRM・接客・商品企画といった分断された機能は、顧客一人ひとりの「意思決定の流れ」を軸に自然とつながり始める。企業が大きく構造を変えなくても、顧客接点がその人らしい形へ静かに最適化されていく──そんな手応えを実感する年になる。

 重要なのは、AIをブラックボックスとして扱うことではない。
むしろ、企業固有の文脈・判断基準・価値観をAIと共有し、「人間が担うべき領域」を意図的に設計することだ。ここを定義できる企業だけが、AIを真の戦略パートナーへと育てられる。

 2026年、マーケターの役割は「AIと人をつなぎ、関係性の未来をデザインする仕事」へと進化する。AIを表層で語り、「マーケターは不要になる」と断じる論は、確実に影を潜めるだろう。

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