マーケティングは、街にどう貢献できるのか #05
逮捕者も出た「渋谷のハロウィーン」。どうすれば、より良い形に変えられるのか【渋谷未来デザイン 長田新子】
2018/11/30
良くも悪くも話題を集めたハロウィーン
「渋谷のハロウィーン大変でしたね。大丈夫でしたか」今年のハロウィーン直後に、多くの人に心配された。
私が4月から始めた渋谷区の外郭団体である渋谷未来デザインの仕事も半年が過ぎて、周囲からも渋谷で何かをしている人と理解されてきた。渋谷や行政関連の相談や提案も増えており、行政、企業、団体との連動が進んで少しずつだが組織として目に見える活動が出てきている。
「渋谷のハロウィーン」と言うが、これ自体にイベントの主催者がいるわけではない。あくまでも自然発生的に年々人が集まるようになり、現在の形になった。
2010年頃から徐々に人が集まり、大人の仮装パレードの集合場所になり、現在では100万人近い人が渋谷に集まると言われている。これだけの人が一極集中で集まるイベントが、日本中にどれだけあるのだろうか。
私が前職のレッドブルで主催したイベントも、2日間で12万人の観客を動員したレッドブル・エアレースが最大規模。これを遥かに上回る規模で人が街に集まっている。さらに主催者がいて全体をコントロールしているわけではないので、予想がつかないのも事実である。
日本のハロウィーンは、バレンタインやクリスマスと同様に、日本の文化とは無関係ながらも、これだけの規模に発展したのは、ある種企業を含めたマーケティングの力だと思う。ハロウィーンという新しいムーブメントやカルチャーが消費者の行動を刺激している。
気がついたら外国人からも「日本のハロウィーンって、やばいね」と言われる規模の行事になっている。友人から「たまたまハロウィーンに遭遇した外国人の友人が、日本のハロウィーンがどこよりも面白いと言っていた」と聞いた。
ある種のエクストリームな状況をつくっているのも事実で、日本人のお祭り好きとコスプレ文化が融合して、ここまで大きくなったのだろう。
逮捕者や被害届も・・・渋谷区の訴え
今年は行政関係の対応として、スクランブル交差点周辺のコンビニなどにアルコール瓶の販売自粛要請やハロウィーンごみゼロ大作戦(エコステーション・早朝ボランティア清掃)、フィッティング・メイク特設エリア、仮設トイレの設置などを行った。ただ、そんなことなど露知らず、ハロウィーンで逮捕者や被害届がでるなど、騒動になってしまった。10月27日の騒動から渋谷区も公式なお願いを発した。ルールやマナーを守らず、周囲に迷惑をかけてしまうのはどうかと思う。
渋谷は、多様性を受け入れている街である。しかし、それもルールやマナーを守った行動が大前提である。渋谷の街を愛し、この街を誇れるよう努力する人がいる一方で、渋谷の寛容性を履き違えている人が多いことも事実だ。
さて、今年は私も立場が変わって、このハロウィーンに対して楽しく区民として参加するだけでなく、街の環境を見守り、市民や商店街をサポートする側の立場にもなった。
ハロウィーンの翌日11月1日は、朝5時から掃除に参加し、実際にどのような状況なのか身を持って体感した。平日朝5時にも関わらず、ハチ公前には仮装した人がたくさんいて、一緒に掃除をするメンバーを探すのも一苦労だった。
渋谷区観光協会も含めて30人程度のメンバーと一緒にハチ公前からセンター街に移動して、道玄坂周辺までゴミ袋とトングを持って、人の行動を観察しながら地道にゴミを拾い続けた。
2人1組などグループで活動しようと決めていたが、集中してゴミを拾っていたら逸れてしまい、人混み溢れるセンター街で仮装軍団と酔っ払いの中に入ってしまいゴミを拾うどころではなくなった。
道端には食べ物の残りから、タバコの吸い殻、飲料関連のゴミ、そして衣装の一部が散在していた。ゴミ箱の周辺には入りきらなかったゴミがたくさん捨てられているのを見ると、ゴミ箱を探して捨てようとした人もたくさんいたと思われた。
渋谷区観光大使・ナイトアンバサダーのZeebraさんも、クラブが点在する円山町などのエリアでゴミ拾いをしており、我々メンバーの一部はそちらに合流して活動した。それ以外も複数の団体や個人もボランティアでゴミ拾いをしており、最終的にはハチ公前広場までゴミを持っていき、回収してもらった。
そんな中、酔っ払った仮装グループから「ゴミ拾い、お疲れさまです」と言われたり、ゴミを渡されたりした。自分のちっぽけさを感じたのと同時に、これではいけないという気持ちがふつふつと沸いた。