音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #02

マーケティング活動を「フレームワーク化」する力は、どうしたら身に付きますか?

前回の記事:
マーケターは転職を経験した方がいいの? 【新連載 音部で「壁打ち」】

ブランドは、人の寿命よりも長く生きられる

【質問】

音部さんが提唱される、「パーセプションフロー・モデル」を自社のマーケティング活動を設計する際に使用させていただいています。音部さんは、こうしたマーケティング活動のフレームワーク化に長けているように思います。どうしたら、そのような力が身につきますか。
 
 フレームワーク化するには、再現性を意識して、物事を概念化して、仕組み化(プロセス化)することを心がけています。ブランドの持続的成長を実現するためには、属人性のみへの依存を下げることが肝要だと考えます。属人性を下げておく理由は、ブランドが人の寿命よりも長く生きられるからです。うまく扱えば100年を超えて世の役に立てるかもしれません。そういったブランドを育てるためには、一人のマーケターの感性やコツのみに依存すべきではありません。ブランドの方が長く生きる可能性があるからです。

 新しい方法の発見などは個々のマーケターの天才性に依存せざるを得ませんが、全てのマーケティング活動を毎回一から学び直す必要はありません。持続的・長期的にブランドが成長する仕組み(プロセス)を確立できれば、マーケターはより創造的な仕事に従事できそうです。それぞれの個性や能力は、今までのブランドチームやマーケターが知り得なかったことを、新たに発見することに使うべきだろうと思います。


 

フレームワーク化は、特殊な能力ではない

 そうした仕組み(プロセス)をつくるためには、世界を観察する際にどの部分を抽出し、概念化して汎用性を高められるか、あるいはどの部分が捨象できるものか、見極める必要はあります。難しそうに聞こえるかもしれませんが、この能力は特殊なものではありません。

 例えば、自動車は動力、ボディ、操作系、駆動系などに分かれていますが、ほぼどの自動車でも同じ構成です。それがエンジンであれモーターであれ人力であれ、動力を持たない自動車はありません。ボディも、操作系も、駆動系も同様です。自動車の構成要素をこのように考えることは汎用性の高い概念化だと言えます。抽象化という思考プロセスを経ることで、概念として自動車を構成する要素が理解できます。対して、特定のエンジンの形式やボディカラー、ホイールの形などは実車を目の前にすればすぐに目につくものですが、概念化する際には捨象されることも多いかもしれません。

 消費者の認識や感情の動き方など、普遍性の高い要素に注目し、現象よりも構造を意識することは概念化の練習になると思います。こういったスキルが強くなると、その副産物として物事を例える「比喩の能力」も高くなります。概念化することで、物事同士の本質的な類似性を見出しやすくなるからです。
 
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