ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #20

ネットリサーチの生みの親 杉本哲哉氏は、どのように激戦市場を勝ち抜いてきたのか

antenna* の立ち上げ、そしてマクロミル売却へ

田岡 その後、研究はどのように進めていかれたのですか。

杉本 まず人の行動や嗜好、ライフスタイルを測る方法について考えたところ、多くの人が触れるニュース配信が使えるのではないかと仮説を立てました。そしてテストしたのですが、結果的に閲覧するニュースの内容は人の嗜好と関係がなく、どんなニュースを読んだのか分かってもユーザーのライフスタイルや嗜好を測るのは難しいということがわかりました。

 そこで、ライフスタイルやエンターテインメントなど、嗜好性の高い情報に特化して配信し、ユーザーがどの情報に反応したかデータを取得しようと考えました。

田岡 そこからマクロミルのパネルに持っていこうと考えていたのですね。

杉本 そうです。こうした発想が根底にあります。

 また、新たな巨大投資には、株主総会の了解が必要です。そして、海外展開や新サービスへの投資には大胆な意思決定とリソース投資、そして何よりもスピードが必要になると思っていましたので、株式の非公開化に向けて2013年にベインキャピタルのTOB提案を受け、自分が保有していたマクロミルの全株式を同社に売却し、グライダーアソシエイツに専念するようにしました。それが2015年です。

田岡 ベインキャピタルの資本を受け入れた理由は、何だったのですか。

杉本 私がマクロミルを最初に退任したときのように、一人に家督を譲ってもうまくいかないケースが起こりうると分かったからです。一方でベインの場合は、チームを組んで経営にあたるかたちだったため、各重要ファンクションに人材も派遣してくれ、ファンクションごとにメンバーを入れ替えることもできます。また、世界中にあるネットワークを使って、さまざまなビジネスチャンスを提供してくれる点も良かったですね。

後編「杉本哲哉氏がグライダーアソシエイツで目指す世界観と、リクルートで学んだビジネス哲学」に続く
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