ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #21

杉本哲哉氏がリクルートで学んだビジネス哲学と、グライダーアソシエイツで目指す世界観

前回の記事:
ネットリサーチの生みの親 杉本哲哉氏は、どのように激戦市場を勝ち抜いてきたのか

ハイブランドもネット広告が出せる場をつくりたい


田岡 グライダーアソシエイツのマネジメントにおいて、マクロミルと違って意識されていることはありますか。

杉本 そんなには変わらないかもしれませんが、antenna* は消費者向けのサービスであるため、「J-WAVE SUMMER JAM」の冠スポンサーをさせてもらうなど、華のあることも手掛けています。なので、そういったビジネスを推進できる人材を採用しています。

また、マクロミルとの違いで言えば、かつては六本木ヒルズにオフィスを構えようという発想もなかったですね。マクロミルの移転先として一度見学に来たことがありましたが、イメージが湧きませんでした。でも、今は多くのお客さんが頻繁にオフィスに来てくれるため、それに適した環境を整えておくことは大事だなと思っています。
杉本 哲哉 氏
株式会社グライダーアソシエイツ 代表取締役社長
1967年神奈川県生まれ。92年早稲田大学社会科学部卒業後、リクルートへ入社。就職情報誌営業部、財務部、新規事業開発室、デジタルメディア事業部門などを経て、2000年にマクロミルを設立、代表取締役社長に就任。05年代表取締役会長、06年取締役ファウンダーの後、09年代表取締役会長兼社長に復帰。12年にキュレーションアプリ「antenna*(アンテナ)」を手掛けるグライダーアソシエイツを設立し、代表取締役社長を務める。同アプリは現在、ユーザ数約650万人、提携メディア数約300、クライアント数約1,500。

田岡 オフィスもブランディングになりますよね。グライダーアソシエイツは、今後どのように展開していこうと考えられているのですか。
田岡 敬 氏
エトヴォス 取締役 COO(最高執行責任者)
リクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。

杉本 最近、雑誌を本当に買わなくなりましたよね。10年前まで5,000憶円あった雑誌の広告マーケットは、今や2,000億円。ものすごい勢いでシュリンクしています。そこで考えてみると、雑誌のマーケットがシュリンクしていることで、雑誌をメインに出稿していたファッションブランドや高級家電のような嗜好性の商品の広告が行き場を失ってしまっています。雑誌広告のマーケットが縮小した分はネット広告に移行していますが、例えばPRADAやGUCCIがニュースサイトでファーストフード店のクーポンの横に広告を出すかと言えば、出さないでしょう。

きっと彼らは、どうしていいか分からなくなる。そこで、彼らがきちんと品格を保てるような場がスマートフォン環境に必要だと考えました。antenna* には1日約1,500記事が集まり、その中から例えば高級な商品だけを扱った記事をまとめるなど、まさにキュレーションの仕方でブランディングができます。そうすれば、例えばハイブランドが納得して広告出稿できるような環境を整えることができます。今後は、そういった場を確保していきたいですね。

田岡 たしかに、ニトリでも雑誌メディアの影響力が落ちてくる中で、どのようなメディアに出稿するべきか常に考えていました。

杉本 それに冒頭で廉売競争によって業界に優秀な人材が集まらなくなるという話をしましたが、コンテンツ業界も同じです。大手の出版社でさえ、企画に充てられる予算が減らされています。

そうすると、最終的に一番困るのが私たち日本人なんです。優れたコンテンツが減る一方で、裏も取れていないような記事が増えてしまえば、日本の民度が下がっていく危険性もあります。そうならないためにも、コンテンツをマネタイズできるように広告主や広告代理店と連携しながらビジネスを動かしていきたいと思っています。

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