ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #31
「北欧、暮らしの道具店」 青木耕平氏が会社の成長スピードは遅くても構わない、と語る理由
エトヴォス 取締役COO田岡敬氏が第一線で活躍するビジネスパーソンから、その人がキャリアを切り開いてきた背景やイノベーションを生み出してきた思考法を探っていく連載企画。第15回は、クラシコム 代表取締役の青木耕平氏が登場する。
青木氏は、2006年にクラシコムを創業し、翌年に北欧のインテリア雑貨を中心としたECサイト「北欧、暮らしの道具店」をスタート。独自の世界観を構築して、女性を中心にファンを獲得。最近は、インテリア雑貨のオンライン販売にとどまらず、新たに始めた広告事業が軌道に乗るなど、事業領域を広げている。
ECの枠を超えて新たな挑戦を続ける青木氏に、クラシコムの在り方や事業展開のスタンスなど、その裏にある思考法を聞いた。
青木氏は、2006年にクラシコムを創業し、翌年に北欧のインテリア雑貨を中心としたECサイト「北欧、暮らしの道具店」をスタート。独自の世界観を構築して、女性を中心にファンを獲得。最近は、インテリア雑貨のオンライン販売にとどまらず、新たに始めた広告事業が軌道に乗るなど、事業領域を広げている。
ECの枠を超えて新たな挑戦を続ける青木氏に、クラシコムの在り方や事業展開のスタンスなど、その裏にある思考法を聞いた。
信頼を預けられるプラットフォームはどこか?
田岡 まずは、青木さんの経営方針からお伺いしていきたいと思います。青木さんは、さまざまなインタビュー記事で「北欧、暮らしの道具店」の経営において「無理をしない」「リソースに合わせて施策を打つ」といった考えをお話されています。
青木 そうですね。成長さえしていれば、そのスピードは遅くてもかまわないと考えています。今期も前年比30%で成長していますが、それでも私としてはブレーキを踏んでいるという感覚です。
青木耕平氏
クラシコム 代表取締役
2006年、実妹である佐藤と株式会社クラシコム共同創業。2007年秋より北欧雑貨専門のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開業。「フィットする暮らし、つくろう。」というコンセプトのもと、北欧に限らず、世界各地、そして日本の、実用的でありつつ暮らしを彩るものを独自の視点でセレクトして販売している。現在は、EC事業のみならず、オリジナル商品の企画開発、WEBサイト上での日々の暮らしに関するコンテンツ配信や、企業とのタイアップ広告、リトルプレスの発行など多岐にわたるライフスタイル事業を展開中。
クラシコム 代表取締役
2006年、実妹である佐藤と株式会社クラシコム共同創業。2007年秋より北欧雑貨専門のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開業。「フィットする暮らし、つくろう。」というコンセプトのもと、北欧に限らず、世界各地、そして日本の、実用的でありつつ暮らしを彩るものを独自の視点でセレクトして販売している。現在は、EC事業のみならず、オリジナル商品の企画開発、WEBサイト上での日々の暮らしに関するコンテンツ配信や、企業とのタイアップ広告、リトルプレスの発行など多岐にわたるライフスタイル事業を展開中。
田岡 わざと成長スピードを抑えているわけですね。
青木 今は急激な成長を目指すのではなく、もともと少なかった広告費をさらに絞ったり、SNSの投稿数を減らしたりしつつ、その分のリソースをYouTubeの公式チャンネルや自社アプリの開発、LINE公式アカウントに割くようにしています。
田岡 既存の取り組みへのリソースを減らして、新しい取り組みを積極的に行っているのですね。
青木 そうです。そもそも、誘導元のプラットフォームも最初はFacebookでフォロワー数が伸びて、次にInstagram、LINE@へと3年ぐらいのスパンで移行しています。
こうした動きを私は「銀行」に例えて説明しているんです。例えば、当初はお客さまからの信用をFacebook銀行に預けていました。ただ、Facebook銀行に全財産を預けるのは不安だなと思っているところに、Instagram銀行が現れたので口座を開設しました。
でもこのご時世何が起こるかわからないし…思っていたところにLINE@銀行が出てきたので、こちらも預けてという流れです。
LINE@も従量課金化してしまう予定ですし、今の私たちとしては「明確に次は、これだ!」と言えるプラットフォームはないので、ずっと覚悟がいる分野として触れないようにしていたアプリ開発に取り組んでいるところでもあります。
- 「北欧、暮らしの道具店」SNSフォロワーまたは友達数(2019.07.16現在)
Instagram 81.9万
LINE 38.1万
Twitter 2.9万
田岡 YouTubeでオリジナル動画も配信されていますよね。
田岡敬氏
エトヴォス 取締役 COO(最高執行責任者)
リクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。
エトヴォス 取締役 COO(最高執行責任者)
リクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。
青木 はい、YouTubeは今のところ、「価値をストックできる唯一のプラットフォーム」だと考えています。AIの精度が高く、しっかり過去動画も含めてレコメンドしてくれるんです。この先どうなるかはまだ分かりませんが、少なくとも投資しがいのある場所として捉えています。
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田岡 TikTokは、どうでしょう。
青木 TikTokもありうるとは思っていて、研究しています。
田岡 大人の女性も使うようになるということですか。
青木 その可能性は、あると思っています。あとは、Pinterestも研究しています。Pinterestは、すでに「北欧、暮らしの道具店」に関する投稿がされていたので、アカウントを開設したところ、すでに月間130~140万人ユーザーが閲覧していたことが分かりました。開設前にPinterest側から成功ケースとして紹介されたアカウントの閲覧者数が約100万人だったので驚きました。
現在は、確実性があるプラットフォームが少ないため、いくつか並行して運用して、どこかが当たればと思っているところです。