ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #32
巨大プラットフォーマーに依存しないために、「北欧、暮らしの道具店」が見いだした唯一の道
ファンを強みに、映像レーベルを立ち上げる
青木 さらに言うと、私たちは映像レーベル、つまり同じようなスタイルの映像ばかりを制作する組織をつくろうとしています。レーベルは音楽や書籍ではすでにあった考え方ですが、国内の映像市場ではあまり一般的ではありませんでした。
なぜかというと、音楽や本は単一市場に対してメーカーが供給量の多寡をもってニッチとマスが共存できるという仕組みをつくっていたのに対し、映像の商業流通はこれまで放送と配給という有限の枠を取り合うため、マス向けの映像しか提供できませんでした。ところが、そこにインターネット配信が出てきたことによって様々なジャンルの映像が流通されるようになってきたので、レーベルが必要になっていると感じています。
田岡 たしかにこれまでのマス向けの商業映像は、認知を獲得するためにとんでもないコストがかかりましたからね。
青木 その点、私たちはすでに多くの読者の方がいて、どういう趣味嗜好を持っているのかも分かっているので、そのスタイルに合わせたものをつくれば、多くのコストを掛けずともきっと届くでしょう。
さらに同じようなスタイルのコンテンツをつくりたいと考える企業とタイアップもできると考えています。
田岡 先ほどお話しいただいた、ライオンとのコラボのような形ですね。
青木 はい。ライオンさんとのコラボレーション映像は、実験として取り組んだのですが、YouTubeのインストリーム広告で50万回流れ、冒頭から平均74%、つまり2分半視聴されていました。15秒に詰め込んだテレビCMを見せるよりも、はるかに効果があるはずです。
田岡 「北欧、暮らしの道具店」のファンではない人にも見せる力があったということなのでしょうか。
青木 それもありますが、実は事前に「北欧、暮らしの道具店」のドラマを数話公開していて、その視聴者である大量のファンにリターゲティングしているんですよ。
田岡 ライトユーザーだけではなく、ミドルユーザーに届いている、と。
青木 それは間違いないと思います。今、動画を見せる場所としてはYouTube一択だと思っています。YouTubeはAIの能力が高いため、適切なユーザーにレコメンドしてくれるんです。
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