ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #02

売上対前年比160%、Twitter日本法人の急成長を支える笹本氏の仕事術【聞き手:ニトリ田岡氏 後編】

前回の記事:
リクルート、MTVを経て、Twitter日本法人代表へ。笹本裕氏のキャリア論【聞き手:ニトリ田岡敬氏】

Twitterの日本での成長率は高く、売上は対前年比160%、全世界での売上の18%を占めるほどになっている。後編では、その成長を支える笹本氏の仕事術について聞いた。

イノベーションには、信頼関係も欠かせない

田岡:笹本さんは、組織にイノベーションを起こすためのフレームワークをお持ちですか。

笹本:難しいですが、まったく新しいことは、過去の経験に当てはめることができず、言葉では表現しづらいでしょう。ただ、それでも定量的に何らか説明しないと事業プランとしては通りません。

ある程度、事業が回っている上で、次のイノベーションを起こす場合、定性的なものと定量的なものをどう組み合わせて、ストーリーをつくるかが求められると思います。

田岡:ファクトで階段を上りながら、最後はジャンプするというような。

笹本:そうですね。そして、そこには人間関係も必要です。最後は、どこかしら「お前がそこまで言うなら」という信頼関係が必要になるんです。

田岡:そういう感覚は日本人にとって理解しやすいのですが、笹本さんの場合、海外のヘッドクォーターとどのように関係を築いているのですか。

笹本:よく日本人は「建前と本音」と言いますが、意外と海外も同じだと思います。ロジカルな思考だけでは本音を引き出すことができない部分もあって、ときには笑いやツカミといった人間味も交えながら、長期的な関係構築が必要です。

 あとは、英語での言葉の選び方も大切です。例えば、問題をプロブレムではなく、イシューと表現したり。何ごともポジティブに伝えた方が、信用を得やすい気がします。



田岡:Twitterでも、そうしたコミュニケーションを重ねることで、変革を積み重ねてきたわけですね。

笹本:はい。すべて数字で定量的に説明できれば分かりやすいのですが、定性的な理解が必要な場合は、その国のカルチャーに沿った例え話をすることもあります。

 例えば、米国人には米国大統領選挙を例に出して、日本で負けるということは重要なフロリダ州で負けるのと同じだ、と説明したりします。外資の子会社としての、コミュニケーションのコツと言えるのかもしれません。
 

少しでも日本のカルチャーを理解してもらう工夫

笹本:逆に、こちらの土俵に引き込んで話すこともありますよ。かつて140文字の制限を撤廃しようという議論がありました。そのときに、日本では140文字に価値があることを説明するために、漢字に込められている意味を説明しました。

 Thank Youを意味する「ありがとう」は、漢字で書くと「有難い」になる。この言葉には、「有ることが難しい」、つまり存在さえ難しい奇跡のようなことに感謝を伝えているのだ、と。日本語の背景にある意味を伝えながら、英語という単語と単語の間にスペースを必要とする言語と、日本語という漢字一文字に込められている意味が多くある言語の違いを説明しました。

田岡:そういう説明を何度も繰り返して、理解してもらう感じですか。



笹本:説明の頻度が必要なわけではないですが、やはり最後は主張が正しいかを調べるためのテストになります。そして検証した結果、140文字を超えると離脱率が高まることを明示して、「やっぱり、本当だったね」と納得してもらいます。

田岡:こちらの土俵という話がありましたが、本国から人がきたとき、Twitter日本法人の何を理解してもらおうと、心掛けていることはありますか。

笹本:私は人とモノ、金、時間という軸で事業を見ています。その中で言うと、まずは「人」です。日本のTwitter社員がどれだけ事業に貢献していて、リーダー層が会社にとって価値があるのかを知ってもらうために説明したり、接点をつくったりします。

 モノという面では、プロダクトの使い方の違いを説明します。例えば、日本は電車通勤が多いので、街で実際に見てもらったり、渋谷の交差点に連れていったりします。そこで、スマホを見ている人がほとんどなことを体験してもらうようにしています。

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