ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #52
売上高370億円、経常利益23億円。バリュエンスは街の中古買取店から、どう急成長したのか
元エトヴォス 取締役COOの田岡敬氏が第一線で活躍するビジネスパーソンから、その人がキャリアを切り開いてきた背景やイノベーションを生み出してきた思考法を探る連載企画。第23回はバリュエンスホールディングス 代表取締役社長の嵜本晋輔氏が登場します(旧社名:SOU ※2020年3月に変更)。
嵜本氏は高校卒業後にJリーグ「ガンバ大阪」にプロサッカー選手として入団。しかし3年で戦力外通告を受け、父が経営していたリサイクルショップに入社。2007年にブランド買取専門店「なんぼや」を関西でオープンして2011年に独立。その後は、東京に拠点を移して「なんぼや」の全国展開をはじめ、自社でリユース事業者向けオークションの運営やブランド品の資産価値が分かるアプリ「Miney(マイニー)」のリリースなど、リユース業界をリード。いまや売上高は約370億円(昨対比20%増)、経常利益も23億円(昨対比25%増 ※いずれも2019年8月期)と、その時価総額は200億円とブランド品のリユース業界の中でもトップになっています。
街の中古買取店から始まった同社が、どのように事業を拡大してきたのか。そして、どのような未来を描いているのか、嵜本氏の思考に迫りました(取材日:2020年3月3日)。
嵜本氏は高校卒業後にJリーグ「ガンバ大阪」にプロサッカー選手として入団。しかし3年で戦力外通告を受け、父が経営していたリサイクルショップに入社。2007年にブランド買取専門店「なんぼや」を関西でオープンして2011年に独立。その後は、東京に拠点を移して「なんぼや」の全国展開をはじめ、自社でリユース事業者向けオークションの運営やブランド品の資産価値が分かるアプリ「Miney(マイニー)」のリリースなど、リユース業界をリード。いまや売上高は約370億円(昨対比20%増)、経常利益も23億円(昨対比25%増 ※いずれも2019年8月期)と、その時価総額は200億円とブランド品のリユース業界の中でもトップになっています。
街の中古買取店から始まった同社が、どのように事業を拡大してきたのか。そして、どのような未来を描いているのか、嵜本氏の思考に迫りました(取材日:2020年3月3日)。
「どこなら高く売れるのか」きっかけはヤフオク出品
田岡 バリュエンスグループは、消費者から高級バッグや時計などを買い取り、それを消費者に販売する「BtoCリユース(中古品販売)事業者」に向けたオークションを開催して販売するビジネスモデルで急成長しています。このモデルには、どのような経緯で行き着いたのでしょうか。
嵜本 私たちは最初からこのモデルだったわけではなく、もともとは一般的なBtoCリユース事業者さまと同じく消費者から商品を買取り、それを別の消費者に対して販売する事業者としてスタートしているんです。
最初は地域密着型の店舗でしたが、2005年頃に当時勢いのあったヤフオクに出品したのがきっかけでした。実店舗の販売価格よりも高く売れるという経験をして。それでしばらくはヤフオクへの出品を続けていたんですね。
嵜本晋輔
バリュエンスホールディングス 代表取締役社長 1982年、大阪生まれ。2001年、Jリーグのガンバ大阪に入団。JFLの佐川急便大阪SCを経て、2004年に現役を引退し、父親が営むリサイクルショップに入社。2007年に実兄2人とブランド品に特化したリユース事業会社「MKSコーポレーション(現ニュースタンダード・グローバルオフィス、以下同)」を立ち上げる。2人の実兄が洋菓子店事業に進出したのを機に、「MKSコーポレーション」のリユース事業を移管する形で独立し、2011年にSOU(現バリュエンスホールディングス)を設立。2018年に東証マザーズへの新規上場を果たす。
バリュエンスホールディングス 代表取締役社長 1982年、大阪生まれ。2001年、Jリーグのガンバ大阪に入団。JFLの佐川急便大阪SCを経て、2004年に現役を引退し、父親が営むリサイクルショップに入社。2007年に実兄2人とブランド品に特化したリユース事業会社「MKSコーポレーション(現ニュースタンダード・グローバルオフィス、以下同)」を立ち上げる。2人の実兄が洋菓子店事業に進出したのを機に、「MKSコーポレーション」のリユース事業を移管する形で独立し、2011年にSOU(現バリュエンスホールディングス)を設立。2018年に東証マザーズへの新規上場を果たす。
田岡 ヤフオクに出品したのには、何かきっかけがあったんですか。
嵜本 サッカーを辞めて、父のリサイクルショップに入社したのですが、一番下っ端なので、この会社で目立つためにはどうしたらいいか考えたんです(笑)。
リユース事業が将来的にどういう流れになるかと予想したとき、絶対にインターネットで売買されるようになると思い、先に入社していた兄に「ヤフオクに出品しないか」と提案したんです。
そうしたら、自社の店舗で1万2800円で売ろうとしていた商品が、ヤフオクで1万7800円の値が付きました。少し工夫をすれば利益が上がるという体験をしたと同時に、会社に自分の存在価値をつくれたと感じました。
田岡 ヤフオクには、しばらく出品していたんですか。
田岡 敬
元エトヴォス 取締役 COOリクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。2020年4月退任。
元エトヴォス 取締役 COOリクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。2020年4月退任。
嵜本 はい。ただ、しばらくして同業他社も参入するようになって、落札への競争率が上がり価格もどんどん下がってきたので、ヤフオクでの販売を止めました。
田岡 その後も他社は、ヤフオクへの出品を続けていますよね。早いタイミングで止めるという意思決定は、どのような理由からですか。
嵜本 他社よりも深く落札価格を分析していたからでしょうか。一つひとつの商品に売却金額の目標を立て、その目標とのギャップが上振れるよりも下振れする方が多くなっていったんです。その数値は私自身がデイリーで見ていました。
田岡 嵜本さん、ご自身で見ていたんですね。
嵜本 はい、自分が現場で何を感じるかが重要だと考えていて、出品も私がしていました。価格の下落から、これは長続きしないと思って、他社が運営するBtoCリユース事業者向けのオークションに出品する形に切り替えたんです。結果的には、ヤフオクには粗利率ではわずかに負けるものの、商品の回転率が圧倒的に良かったので、オークションへの出品に完全に切り替えることにしました。
田岡 リユースは在庫として商品を保有している期間をいかに短くして、キャッシュフローを素早く回していくことが重要ですよね。ビジネスを始めた当初から粗利率だけではなく、その観点を持っていたことは素晴らしいですね。