「マーケティング」という大海を、航海するための羅針盤 #05

マーケティングにコミュニティが必要なワケ

前回の記事:
「Nizi Project」J.Y.Parkのコーチング技術に見る、人の行動が変わる瞬間
 前回までの2回は、大ヒットオーディション番組「Nizi Project(ニジプロジェクト)」をビジネス視点で分解して、ビジネスパーソンに役立つポイントを解説しましたが、今回から数回に分けてコミュニティマーケティングについて考えたいと思います。まず第1回は序章として、なぜ今コミュニティマーケティングが重要なのか、という背景について説明していきます。
 

過去と現代のコミュニケーションの大きな違い


 3000回。

 これは、一体何の数値でしょうか?

 現代人が朝スマートフォンを持って出かけて、夜、家に帰るまでに接触していると言われる広告の数です。おそらく、ほとんどの人はどのような広告に接触したか覚えていないと思います。

 なぜなら、それはシンプルに「自分ゴト化」できない関心の低い広告を見せられているからです。仮に自分にとって関心の高い広告であっても、広告に対して受容態勢のある「Moment(瞬間)」を捉えていないと届きません。

 なぜ、このような状況になってしまったのでしょうか?

 これは1日あたり接触する3000回の広告もそうですし、その他にもLINEやInstagram、Twitterなどのコミュニケーションツール、ニュースアプリなどで、さまざまな情報があふれているためです。もはや広告は相当な工夫をしない限り、届かなくなっています。消費者は情報で満腹になっているのです。

 こちらの図を見てください。



 左の図は、昭和から平成前半までの市場構造です。インターネットが普及するまでは、大企業がテレビCMや新聞広告で告知する商品・サービスが良いものとして認識されていました。

 そこからインターネット、特にスマートフォンが普及した2010年以降は右の図です。企業からの情報だけでなく、真ん中に「C to C」と書いているとおり、ユーザー同士がインターネット上で商品・サービスの評価を議論するようになりました。

 Amazonで本を買うとき、食べログで飲食店を予約するとき、Twitterでテレビ番組を検索するとき・・・他人の意見やレビューを気にします。

 すなわち、企業からの大量の情報ではなく、自分と対等な立場の消費者、特に関係の近い友人の情報を信用して意思決定するようになりました。これは、消費者自身が情報過多の世界の中で自己判断ができない、判断力が低下していると言えます。

 まずこの状況を認識しておかなくては、過去の市場構造の図のように、企業から一方的に大量の情報をリーチさせるだけのアプローチを続けて、費用対効果が悪くなってしまいます。念のために補足しておくと、過去にも個人同士のレビューの場はありましたが、恐らくは近所や学校など地域限定で発生していました。それが、スマートフォンが登場したあたりから、地域を飛び越えて関心軸でのつながりが加速度的に広がるようになったのです。

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