"Go Funny" 迷ったら面白い方を選ぶ、外資経営者のキャリア論 #04

突然、自分の勤める会社が買収(M&A)された時に必要な心構えについて

前回の記事:
社長経験者が明かす、外資系企業の報酬とリストラの関係
 先日、ソフトバンクグループが買収後たった4年しか経っていないアームをエヌビディアに売却するというニュースを見ました。昨今、ますますM&Aが活発になっており、いつ何時、自分の勤める会社が買収されてもおかしくありません。

 一方で、買収する側も単に支配権を取得すればいいという話ではなく、グループ内にその企業を取り込み、買収前より企業価値を増加させるためのPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を成功させる必要があります。ただ、このPMIに関する記事や書籍、講座などは数多くありますので、私から解説するつもりはありません。

 今回は、私が買収される側に立ったときに“しくじった2つのエピソード”を元に、あまり語られることがない「買収される側の心構え」をお伝えしたいと思います。
 

エピソード1:転職後、半年でクビになる


 2005年のゴールデンウィーク前のある日、私はFlashで一世を風靡していたマクロメディアの最終面接を通過し、内示をもらいました。

 しかし、その日の朝刊でマクロメディアがA社に34億ドルで買収されることを知ります。「寝耳に水」とはまさにこういう事態を指します。そして清水の舞台から飛び降りる勢いで、日本の大手企業を辞めて買収される予定の外資日本法人に転職することになります。

 そうして入社後のある日、買収前ではありますが、A社CEOがワールドツアーでマクロメディア日本法人に表敬訪問することになりました。CEOによるスピーチの最後の質問タイムに、遅々とした買収プロセスの遅れに痺れを切らしていた私は、不遜にも次のように聞いてしまうのです。

 「A社はこれまでいくつかの会社を買収してきたが、ことごとくプロセスが遅く、ローカルマーケットにダメージを与えている。今回は、そうならないように迅速にプロセスを進めてもらえるんでしょうね?」



  自分の部署だけでなく、日本法人の全部署で困っていたので何とかしてほしいという気持ちからの発言でしたが、買収先の一従業員がそんな口の聞き方をして良い印象を与えるわけはありません。

 さらに、各国の公正取引委員会による承認前は、ローカルオフィス間の接触が禁止され、お互いに調整したいことがどんどん山積していくため、許可が出るのをジリジリしながら首を長くして待つことになります。

 しかし、しばらくしてローカルオフィス同士の打ち合わせが解禁になったものの、「本社に聞かないと判断できない」という官僚的な受け答えをする買収側の社員に対して、私は「仕事は現場で起きてるんだよ!」と、かつての人気刑事ドラマ「踊る大捜査線」風の発言をしていました。

 先方からすると、「なんで買収される側のヤツに、こんな上から目線な言い方されるんだろう」という気持ちになったに違いありません。

 そして2005年の師走、A社のマクロメディア買収が各国の公正取引委員会から承認され、正式に統合された初日、私はマクロメディアから解雇通告を受けました。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録