「マーケティング」という大海を、航海するための羅針盤 #11後編

マネージャーの役割は、未来を話すこと。「良い1on1」の条件とは?

前回の記事:
部下を伸ばす「良い1on1」と、伸ばせない「ダメな1on1」
 今回は、私なりに考える「良い1on1と、ダメな1on1の違い」を考えていければと思います。前編では、上司の視点から1on1について考えてみました。後編は、メンバーの視点から考えていきましょう。
 

⑤    過去ではなく、未来の話




 前編のポイント③でも触れましたが、進捗確認をひたすら1on1で実施することによって、メンバーが成長するケースもあります。ただし、進捗確認だけをしているとメンバーは言われるがままで、思考停止になることがあります。これでは、1on1の前提である「信頼構築の関係」から、ますます遠ざかってしまいます。
 
 1on1の真骨頂は、会話をきっかけとした「気付き」を与えられることです。これがないとマネージャーとしての役割は果たせません。そのためには、過去の進捗が悪いプロジェクトの改善点を一つひとつ指摘するよりも、その人が未来に成果を出すためにはどういう成長が必要で、そのためには今何をすべきなのかをすり合わせることが大切です。



 そこでは前述の「信頼関係の構築」が必須です。信頼関係がない相手からのインプットは、何を言われても響きにくいからです。まずは信頼関係をつくってから、キャリア形成や中長期の成長にはどういう環境で、上司は何をサポートすれば良いのかが話し合える状態になります。

 これは1on1に限りませんが、マネージャーやリーダーはなぜこの仕事やるのかをメンバーと上位概念で対話することが大事です。人間が能動的に動くためには、やはり理由が必要です。単純に「この作業をやってください」というタスクを振るのではなく、「なぜ今やる必要があるのか」を説明して、みんなが納得感を持って仕事をするのです。この背景の説明は、決して時間がかかるようなものではなく、本気を出せば1分で終わります。

 この上位概念が大事なことが分かるエピソードがあります。米国のリンドン・ジョンソン元大統領がNASAのオフィスに訪問した時、周囲の人と違っていきいきと掃除をしている清掃員がいたため「あなたは何をしているのですか?」と声をかけたところ、「私は人類を月に送ることに貢献しているんです」という答えが返ってきたそうです。単純に「清掃をする」というタスクではなく、上位概念で仕事に取り組んでいることがわかります。すごく素敵ですよね、まさに未来の話です。

 未来の話をすることで、メンバーの仕事がどのように将来に結びついて、キャリアが花開くのかが想像しやすくなります。それこそがマネージャーの役割です。さらにマネージャー、メンバー双方で「現状のスキル」と「今後の伸びしろ」を理解して未来のアクションを設定できると理想的です。メンバーは未来をベースに意識して話すことにより、実現するために必要な物がマネージャーとディスカッションして生まれることもあるかもしれません。

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