Droga5 CCO 浅井雅也氏「本質」を見極めてブランド変革を起こす
同社のチーフクリエイティブオフィサーに(CCO)には、元TBWA HAKUHODO グローバルクリエイティブディレクターの浅井雅也氏が就任し、日本のクリエイティブをグローバル視点で牽引していく今後に注目が集まっている。
今回は、一貫性を持ったブランド体験を企業はどのように提供すべきか伺いました(前回の記事は、こちら)。
日本企業が世界へ向けて発信するお手伝いを
――日本人は消極的な表現やハイコンテクスト文化が強く、アクションに一貫性のない企業も見受けられます。浅井さんが今後、日本企業のクリエイティブをリードしていく場合、どのようにアプローチしていきますか。クリエイティブを制作する際には、その内容だけでなく、何よりも関係者全員が意識を統一することが大事です
Droga5はユニークなクリエイティブ・エージェンシーです。世界最高峰のクリエイティブを提供するメンバーが集まり、企業の戦略立案といった上流から、マーケティングプログラムの実行といった下流まで様々なビジネスのフェーズにクリエイターが介入しています。直接、クライアントのCEOやCOO、CXOなどの経営陣とディスカッションしてブランドの未来を考え、ブランドパーパス(存在意義)を定義し、それを浸透させるところまで一気通貫で携わることができます。あらゆるフェーズに私たちのアイデアを組み込んでいくことが出来るのです。
Droga5では、図の右側にある「パフォーマンスマーケティング(デジタルアドなど、データを活用して効果を高める施策)」や「インテグレーテッドアド(フィルム、屋外広告、イベントなど様々なタッチポイントをカバーしてブランドを浸透させる施策)」に加えて、図の左側にある「エクスペリエンスデザイン」や「ビジネスデザイン」の領域にも注力します。ここは、特にアクセンチュア インタラクティブと密に連携しています。
魅力的なブランドを作るには、アクションの「一貫性」がとても大事です。一過性のアイデアではなく、継続できるものをつくる。あらゆるブランド体験にパーパスに基づくクリエイティブを組み込んでいく。そうすることで、世界にしっかりと通用するブランドを日本から輩出していきたいと思います。
「アクションの一貫性が大事」という点が顧客企業のカルチャーに根づけば、アクションを起こす際にパーパスにマッチするかが判断基準となり、社員自ら企画・実行できるようになります。その積み重ねが、いい企業とブランドづくりになっていくのです。
エコの追求が非エコを作り出す
いま企業は環境への配慮が求められていますね。しかし、企業は環境を意識した、一貫した体験を生活者へ提供できているでしょうか。
例えば、ブランドとして「エコ」や「サスティナビリティ」を掲げていても、実はオンラインで購入するとプラスチックに厳重に包まれて届くことがあります。
また、エコバックを持っているからエコに貢献していると思われがちですが、色々な企業がエコバックを生産し、エコバックの量が増えて、タンスに埋もれてしまっては身も蓋もありません。
こうしたエコでない状況をつくり出している状況を把握し、企業も生活者も本質的に何が大事かを見極める必要があります。
そのような中、「パタゴニア」は一貫性のあるブランドだと個人的に思っています。パタゴニアは店頭で買い物をしても袋はもらえません。「袋が欲しい」と言っても、「袋はない」と言われます。そこまで徹底している姿勢がとても格好いいと思うし、逆に徹底されていない企業を見ると、パーパスが浸透していないと感じてしまいます。