マーケターズ・ロード 鈴木康弘 #04

Amazonにどう対抗するか? 逆境を超えるアイデア力でEC事業を黒字化【デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘】

リアルの実績を出して、現状を打破

 ひとまず、相手の土俵、つまりリアルの世界で結果を出さなければ、周りを説得するのは難しいと考え、グループ各社のホームページのリニュアルから始まり、日本テレビとの合弁会社である日テレ7を立上げ、メディアによる消費の創出を実現し、秋元康さんと知り合いAKB48とのコラボ商品を開発したりしました。中でも一番成功したのは、SMAPとコラボした「ビストロ弁当」です。



 フジテレビの人気番組『SMAP×SMAP』内のコーナー「BISTRO SMAP」とのコラボ企画です。企画は4年間続き、弁当5種類で60憶円を売り上げました。テレビコンテンツと連動した企画で、ものが動く。チャネルをまたいだ施策で商品が売れるのだということを社内に理解してもらうには効果的だったと思います。

 ネットとの融合という事業変革を成し遂げる上では、社員教育も非常に重要なことでした。例えば、問題解決技法。ブレーンストーミングをして、ロジックツリーを書いて課題化し、ビジネスモデルキャンバスにまとめながら事業化していく――メーカーでは当たり前とされているこの手法ですが、小売業(だけではないかもしれませんが)では習ったことがない人が大多数ですから、一から教える必要がありました。

 また、新規事業を立ち上げるには、起業するのと同様に「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」が資源となり、これらを上手く設計する必要があります。しかし、今まで商品づくりや店舗づくりを担当していた人に、急にお金の勘定をさせようと思っても難しい。経営資源について理解し、最適な配分ができなければ、事業を立ち上げることはできないのです。

 やり方を知らないだけですから、教えればできるようになります。ただ、社外のコンサルタントに教えられるならまだしも、新参者である僕にあれこれ言われることに、抵抗感を覚える人は多かったと思います。

 従来のやり方で結果を出して役員になった人は、ネットなんてものが世の中になければ、残りの会社人生を幸せに過ごすことができます。ネットを認めてしまったら自らのキャリアを否定することになりかねませんから、全力で潰しにかかって来ましたね。

 僕の悪口が書かれた怪文書が出回ることも珍しくはありませんでした。これはセブン&アイだからということではなく、大企業というのは、そういうものだと思います。
 
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セブン&アイ オムニチャネル戦略発表から退任までの1000日間と、独立【鈴木康弘】
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