変革のカギを握るCxOの挑戦 #05

マーケティングから人事領域に挑戦、みずほ 執行役員の秋田夏実氏の新時代キャリア論

前回の記事:
組織の足並みは揃わないことが前提、中外製薬の志済聡子氏が語る全社でDXを成功させるポイントとは?
  パイオニア チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)石戸亮氏がマーケティング・DX・CX領域で活躍経験のあるエグゼクティブにインタビューし、その人が実績を出している裏側にある考え方を解き明かしていく連載。第3回は、2022年5月にみずほフィナンシャルグループのグループCPO(Chief People Officer)に就任した秋田夏実氏(みずほフィナンシャルグループ グループ執行役員 人事グループ副グループ長)が登場する。主に金融領域のマーケティングで経験を積み、前職のアドビ㈱では副社長として組織開発やマーケティングを統括した。前半では、みずほフィナンシャルグループでのCPOとしての役割から、これまでのマーケティング領域とは異なる人事領域に挑戦した背景などを聞いた。
 

日本では珍しい? CPOとしてのミッション


石戸 現在、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)での役職はCPOのチーフ・ピープル・オフィサーの略ですよね。人事領域ではCHROのチーフ・ヒューマン・リソース・オフィサーという役職をよく聞きますが、CPOは具体的にどのような役割を期待されているのでしょうか。

秋田 みずほでは、人材こそが経営において最も重要な資本であると考えられています。そのため、一人ひとりの個がより強くなり、自分らしさを発揮しながらもお互いの違いをきちんとリスペクトしながら集える、インクルーシブな組織にしていくことを目指しています。

その上で、CPOである私の一番のミッションとして、さらに目指すのは「社員のエンゲージメント」を高めることです。それを軸とし、組織開発や人材開発、ダイバーシティ&インクルージョン、社員の健康などを実現していくことだと考えています。
 
みずほフィナンシャルグループ
グループ執行役員 人事グループ副グループ長(グループChief People Officer)
秋田 夏実 氏

以前はアドビ株式会社のマーケティング担当副社長(VP)、マスターカード⽇本地区副社⻑、シティバンク銀⾏デジタルソリューション部⻑。東京⼤学経済学部卒業、ノースウェスタン⼤学ケロッグ経営⼤学院卒業(MBA)。NewsPicksプロピッカー、やまなし大使、情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授、ワインエキスパート。

石戸 会社によりますが、社員のエンゲージメントにはまだまだ開発の余地がありそうだなと思っています。みずほは、改めてそこに重きを置かれたのですね。

秋田 そうですね。最近は人的資本経営など、社員のエンゲージメントを高めることを意識する会社や組織も増えてきています。実は、その中でも、みずほは早くからさまざまな取り組みを行っています。

たとえば、メガバンクの中ではいち早く副業を認め、社内外兼業制度も導入しています。社内兼業とは、自分のリソースの20%を上限に、他部署の仕事ができるという制度です。この制度によって、新たなキャリアにも挑戦しやすい環境を整えています。

先ほど、目指す組織について「一人ひとりの個がもっと強くなる」とお話ししましたが、その言葉が単に聞こえのいい「飾り」ではなく、実際に後押しできるような仕組みがきちんと整っていると感じます。

石戸 歴史の長い会社はしがらみが多く、なかなか変革に着手できない傾向があります。しかし、みずほはどんどん新しい取り組みをしていますが、なぜそれが実現可能なのでしょうか。

秋田 変革に対してとても前向きなのですよ。たとえば、私は国内外の金融機関のみならずIT業界も経験していて、3人の子供の母親でもあり、異質な経歴を持っています。しかし入社以来、遠巻きにされるどころか、社内のいろいろな人から「相談したい」「意見を聞きたい」と声をかけてもらい、必要とされていることを実感しています。私だけでなく社外からみずほに加わった社員は、皆同じように感じていると思います。

石戸 組織として、外から新しい人や取り組みを受け入れる文化があるのですね。

秋田 そうですね。中の人間になってみて、非常にオープンで、進取の気性に富んでいる組織だと感じます。

ただ、せっかく素晴らしい取り組みを始めても、それを社外にアピールすることに対しては、あまり積極的ではなかったかもしれません。これまで、マーケティングに携わってきた私からすれば宝の山なので、もっと世の中の多くの人に、みずほの魅力を知ってほしいなと思っています。

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