変革のカギを握るCxOの挑戦 #07

CHRO(最高人事責任者)とCDO(最高デジタル責任者)を兼務、稀有な人材はどう生まれのか?日揮ホールディングス 花田琢也

 

エンジニアリング、経営、人事と幅広い経験が今につながる


石戸 では、CHRO とCDOを兼務するという稀有な人材が生まれた背景を探っていくため、さらに花田さんのご経歴を詳しく聞いていきましょう。
   
パイオニア チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)
石戸 亮 氏

花田 1982年に新卒として日揮(当時)に入社してから、もう40年が経ちます。私の経歴は、ずっと日揮に戸籍を置きながら、いろいろな会社に住民票を置いて仕事をしてきたという印象です。

最初は、日揮の本流である石油・ガス分野のシビルエンジニア(土木エンジニア)に従事していました。その後、日揮がそれ以外の分野にもビジネス領域を広げていこうという方針で、自動車分野の技術を会得するためにトヨタ自動車に出向しました。

2000年に入ると、設計から調達、建設までを行うEPC事業以外のビジネスにも拡大しこうと、ライフサイエンス業界向けの調達サイトをNTTと一緒に立ち上げ、その事業を社長として牽引しました。最初は大変でしたが、軌道に乗り、この先は左うちわで行ければと思っていたら、2008年に呼び戻され、今度はアルジェリアに行くことになりました。当時の日揮は海外のプラントが事業の8割を占める会社で、ちょうどその頃、海外の拠点を充実させるとともに、その国の経済発展のサポートにも挑戦していて、私がJGCアルジェリアの社長に就任しました。

その後、2012年に日本に帰国してからは、国際PJ本部でプロジェクトをまとめたり、インフラ統括本部で事業開発をまとめたりしていましたが、2017年に人事部長(人財・組織開発部長)に任命されたことが、ひとつの大きな転機になりました。当社は従業員の9割がエンジニアです。そのため、エンジニアを積極的に育成していく必要がありますが、人事部長は創業以来90年間、事務系の人間でした。エンジニアへの叱咤激励による成長を期待され、バックグラウンドにエンジニアの経験を持つ私が人事部長を務めることになりました。

すると、その翌年には、今度はデジタルが随分と遅れているので巻き返してほしいと言われ、CDOに就任しました。過去にNTTと一緒に立ち上げた調達サイトは、ゼロからつくっていたので、デジタルに関しては無縁でなく、そのときの経験が活かせるのではないかという背景があったようです。

2021年には、日揮グループの海外EPCプロジェクトを遂行する日揮グローバルのエンジニアリング部隊であるエンジニアリングセンタープレジデントを務めました。そもそもエンジニアリングとは、「多分野にわたる『人間の知恵』を集結・統合し、一定の課題を達成する科学技術的な活動のこと」を指します。そのエンジニアリングは、近い将来、新たなデジタルプラットフォーム上でコモディティ化され、ゆくゆくは価値が変化していきます。その変化に対応していくためには、エンジニアのマインドセットや組織の在り方を変える必要があるというのが日揮ホールディングスの社長の考えで、一年間、私はその将来に備えた基盤造りに取り組みました。

その中で、やはり人財を育てるためにはエンジニアリングセンターだけではなく、日揮グループ全体として取り組む必要があると考えたことから、2022年4月に私がグループ全体のCHROに就くことになり、現在ではCDOと兼任しているという状態です。

石戸 エンジニアリング、経営、人事と、幅広い経験をされてきたのですね。さまざまな経験を積まれる中で、心掛けてきたことはありますか。

花田 それぞれの企業やビジネスでは価値観が異なるので、常に新たな価値観をもって接してきたというのが、ひとつ言えることですね。
   
対談中の花田氏(左)と石戸氏(右)

※第2回「2030年のデジタル戦略をたった半年で描いた日揮ホールディングスの推進力とは?」に続く
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