変革のカギを握るCxOの挑戦 #10

ライフネット生命 森亮介氏が34歳の若さで社長に抜擢された理由

 

経営者として大切にしていることは、“わがまま”であること


石戸 多くの会社が「年齢の若い層に商品を購入してもらいたい」「会社をデジタル化したい」と目標を掲げながら、経営陣が50歳以上であることが多いですよね。ご自身でターゲットのことはわからない、デジタルも下に任せるという方も多く、それに良し悪しはないですが、そもそも私は経営にもっと多様性があったほうがいいと思っているのですが、森さんは、どうお考えですか。
  
多様性に関して質問をする石戸氏

 私も多様性が大事だと思います。当社の社員の平均年齢は若いですが、50代以上のベテラン社員も働いています。それぞれの年代が持つ特長は異なるので、さまざまな年齢の人がお互いの違う部分をリスペクトし合いながら、全社として良い方向に進んでいきたいと思います。特に20代や30代の人は失うものがほとんどないので、遠慮せずに思い切ってチャレンジしていくべきだと思います。

私自身も、まだまだ経営者として未熟な部分があり、私一人であれば判断を間違えそうになるシーンもあります。そのため私が苦手な領域については、経験豊富な仲間を頼るようにしています。一方で、前社長の岩瀬さんからは「さまざまな人の話は聞いたほうがいいけど、やっぱり最後はわがままにやったほうがいいよ」と言われたことがあります。最後は自分の意志を通すことも大切だと思っています。

石戸 他の人の話は聞くけれど、最後はわがままに進めるということですか?

 そうですね。でも実は岩瀬さんは、全会一致を重んじる人でした。誰かひとりでも納得できていなければ、議論に時間をかけていましたね。そういうこともあって、「わがままを言うことは、社長の切り札。今はそのタイミングではないと思って、その切り札を使い渋っていたらあっという間に時間が経ってしまっていた。森くんはそういう後悔をしないように」と私にバトンを渡すときに振り返って仰っていたことが印象に残っています。

だから、岩瀬さんは「社長になって1年目から、最後は全会一致ではなくても、躊躇せずに決断したほうがいい」と言ってくれたんだと思います。その言葉は、私にとって大きな金言であり、毎回その言葉を思い出しながら決断していますね。
  
「わがまま」の大切さについて語る森氏

石戸 そのアドバイスは、マネジメントではもちろん、プレイヤーでも、スペシャリストにも有効だと思います。そこに年齢は関係ないかもしれないですね。

 そうなんですよ。普段の業務でも、自分の仕事だと思う領域に対しては、最後は自分のわがままで取り組まないと。きちんと結果を出すということは、そういうことだと思います。もちろん周囲に感謝することは、絶対に忘れてはいけないと思います。

※後編「ライフネット生命 森亮介氏は、苦しかった時期をどう乗り越えたか」に続く
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