国境は地図の上にない、心の中にある #05

先行メーカーが独占的シェアを持つタイ、元ユニ・チャーム 木村 氏はどう切り崩したのか。

前回の記事:
紙おむつ界の革命児「ムーニーマン」の開発秘話と、マーケティング思考の根本【元ユニ・チャーム 木村幸広】
  ユニ・チャームで30年以上に渡りマーケティングに携わり、タイ法人及びインド法人の代表などを歴任し、同社の海外の重要拠点の黒字化に成功した経験をもつ木村幸広氏。この連載では、世界で活躍するグローバルマーケターになるまでの軌跡を辿りながら、グローバルで成功する要件と、マーケティングに重要な消費者視点などを紐解いていく。第5回は、木村氏がタイ法人の社長として赴任して目の当たりにした厳しい現実と、ゼロから営業組織をつくり上げたエピソードを紹介する。
 

「計画者=実行者」という覚悟


 1999年、38歳のときにタイ法人に社長として赴任しました。そのきっかけは、日本でベビー用品のタイへの参入プランをつくったことです。当時、私はベビー用品のマーケティングディレクターを務めていました。将来的に日本の出生人口が頭打ちになると予測されている中、海外市場での成長がテーマになったんです。



 私は海外での成長計画をつくろうと、さまざまな国の市場を調べてタイにターゲットを定めました。そして事業プランを練り、社長に提案したところ「よし、木村が社長として赴任してくれ」と言われたんです。まさか、自分が行くことになるとは思ってもいなかったので驚きましたが、結果的に自分のプランを自らの手で実行することになりました。

 ユニ・チャームには、「計画者=実行者」という言葉があります。計画をつくった人が実行するからこそ成功するという考え方です。同社の高原豪久社長は「エース人材を海外に送る」と常々言われていますが、マーケティング責任者を担っているような人材が未開拓の地に行くからこそ事業が成功するのだと思います。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録