マーケターズ・ロード 富永朋信 #03

もし目の前に2つ選択肢があったら、より振れ幅が大きいほうを選んだほうがいい【イトーヨーカ堂 富永朋信】

目の前に2つの選択肢があったら、振れ幅の大きいほうを選べ

 ウェブ・ティービー・ネットワークスで得たことのなかで大きかったのは、やはり「デジタル」の知見です。当時は、さまざまな業界にインターネットが入り込み、新しいビジネスやサービスが次々と生まれ始めた時代でした。

 例えば金融業界は、インターネットによって「アセットマネジメント」と「ディスカウントブローカーレージ」に2分化されるという話がありました。こうした中、東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)の一部の優良顧客向けに端末を配布したり、インターネット専業の証券会社 カブドットコム証券と提携して推奨端末にしてもらったりといった営業活動を行いました。

 インターネットを核に、興味・関心がより広範囲に広がっていったのもこの頃です。インターネットによる、サプライチェーンの変革もそのひとつです。

 当時、取り沙汰された言葉のひとつに「エフィシェント・コンシューマー・レスポンス」(※編集部注)というものがありました。



 そして、それを象徴する企業がデル。受注してから商品を組み立てて顧客に届けるBTO(Build To Order)の仕組みを確立し、完成品の在庫も部品の在庫もほとんど持たないデルは、メーカーのサプライチェーンマネジメントのひとつの成功例と言えました。 
 

※編集部注
メーカー、卸業者、小売業者が緊密に連携してサプライチェーンの効率化を進め、無駄な在庫を持たないことで低価格を実現するなど、より高い消費者価値を実現しようとすること。

 ボストン・コンサルティング・グループが「デコンストラクション」(※編集部注)を提唱したのも、まさにこの頃。
 

※編集部注
事業のバリューチェーンを再構築すること。バリューチェーンを付加価値の連鎖と機能とに分けて分析し、どの機能が、費用に対して生み出す付加価値が高い/低いのかを明らかにした上で、再構築を検討する。

 そうして多くの企業がバリューチェーン分析を行った結果、Webで注文した商品を自宅に届けてくれるネットスーパーが出てきたり、GMが車載テレマティクスサービス「オンスター」を発表したりと、コンベンショナル(伝統的)な企業がインターネットやネットワークを活用して新しいことに挑戦し始めた時代でした。

 世の中が、非常にダイナミックかつドラスティックに動いていましたね。

 ビジネス全体のランドスケープやイノベーション、次々と登場する経営理論やマーケティング理論を知るのは面白い。

 そんな実感を得たのが、この頃でした。その後、WebTVはなくなってしまいましたが、僕にとってはさまざまな学びのきっかけがあり、今に活きる経験をすることができた場所でした。

 僕は、もし目の前に2つ選択肢があったら、より振れ幅が大きいほうを選んだほうがいいと思っています。目の前に現れるオプションというのは、自分が行動したことの結果です。自分の中から出てきたものにすぎないわけですから、多少振れ幅が大きすぎるように見えても、たかだか知れていると思ったほうがいい。

 そう考えないと、より大きなことができないし、短い人生の中でさまざまな経験をしたり、上のポジションに上がっていくことはできません。

 結果論にはなりますが、新しいチャレンジができたウェブ・ティービー・ネットワークスを選んだことは、僕にとっていい選択だったのだと思います。

<次回、「ところで、その人の靴は舐めましたか」 僕が三枚目のデブキャラにシフトした理由(第4回)は、18日公開予定>

 
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「ところで、その人の靴は舐めましたか」 僕が三枚目のデブキャラにシフトした理由 【イトーヨーカ堂 富永朋信】
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