国境は地図の上にない、心の中にある #07

インド市場の開拓、その裏側を元ユニ・チャーム 木村氏が語る

前回の記事:
体重が10キロ減るほど苦労。タイ市場攻略で、人生観を変えた成功体験【元ユニ・チャーム 木村幸広】
 ユニ・チャームで30年以上に渡ってマーケティングに携わり、タイとインド法人の代表を歴任し、海外の重要拠点の黒字化に成功した経験を持つ木村幸広氏。この連載では、世界で活躍するマーケターになるまでの軌跡を辿りながら、グローバルで成功する要件とマーケティングに重要な消費者視点を紐解いていく。第7回は、タイでの成功からインドへの参入が決まり、現地代表に就任したエピソードを紹介する。
 

タイでおむつ市場ナンバーワンのブランドに成長


 今回は、私がタイ駐在から日本でのマーケティング経験を経て、再びインド市場に挑戦した経緯を紹介します。連載の第6回では、1999年から5年半ほど駐在したタイで体重が10キロも減るほど苦労したとお伝えしました。当時、タイ国内で発売されていたおむつは、夜に漏れることが当たり前でしたが、ユニ・チャームのおむつブランド「マミーポコパンツ」は漏れないという強みを活かしたコミュニケーションを展開し、現地のお母さんの支持を得て商品の売れ行きは徐々に伸びていました。

 一方で、おむつの市場価格は、競争環境の中で下落していきました。ただ、マミーポコだけは、何度も品質改良を繰り返しながら商品のベネフィットの訴求に注力したことで、発売時の価格を維持し続けました。
引用:Unicharm ThailandのMamypoko

 品質改良とともに、コミュニケーションも変えました。最初は「1枚のおむつで2枚分も使える」というメッセージから始め、その後は「1枚でグラス5杯ほどのおしっこを吸収できる」に変更しました。

 あくまでもマミーポコは、夜に使用する「安心のおむつ」というコミュニケーションを一貫して続けたのです。それによって、商品そのものの安心感やブランドイメージが醸成され、「高いけど、良い商品」という認識が広がっていきました。

 その後、おむつカテゴリーで商品ラインアップを拡大しながら、顧客数を増やしていきました。私がタイから日本に戻る頃には、市場全体で約60%のシェアを獲得し、タイではナンバーワンのブランドになっていました。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録