国境は地図の上にない、心の中にある #07

インド市場の開拓、その裏側を元ユニ・チャーム 木村氏が語る

 

ネクストマーケット開拓のためインドへ参入


 正直なところ、最初に高原社長からインドへ参入したいという話を聞いたときは驚きました。中国市場でのシェアが伸びていたので、リソース的にも、今すぐインドに参入しなければならない理由は、あまりないと感じていたからです。

 ただ、高原社長はインドへ足を運んだとき、進出するなら今がギリギリのタイミングで、先延ばしにすると競合に出遅れてしまうという危機感を抱いたようです。日本だけでなく台湾や韓国も少子高齢化で人口減少が進んでいたため、そう遠くないうちに次の市場を開拓していく必要があると強く感じていたのです。私はマーケティングにおいて新市場を開拓するときは、必ず人口動態などマクロ視点でも市場を見ることの重要性と現状に満足せず次に挑戦することの大切さを学びました。



 私が専任としてインド市場への参入を推し進める役割を与えられ、2008年2月に市場調査のため初めてインドの地を踏みました。そこから具体的な参入計画を練り始め、2008年10月にインドへの赴任が正式に決定しました。第5回でも紹介したように、ユニ・チャームには「計画者=実行者」という言葉があり、計画をつくった人が実行するからこそ成功するのだという信念があります。

 当時、インドはまったくの未開拓だったので、日本でいろいろなデータを取ってはみたものの、結局は実際に赴任してみなければ、何もわからないという状態でした。インドに降り立ったのは、私ともうひとりの2人だけです。彼と2人で飛行機を降りたとき、「さあ今日はどこへ行こうか」と話し合うほど、何も決まっていない状態からのスタートでした。

※後編に続く
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