変革のカギを握るCxOの挑戦 #14
金融からファッションへ。異色の経歴を持つZOZO廣瀬文慎COOが挑むファッションDX
小林製薬 執行役員 CDOの石戸亮氏がマーケティング・DX・CX領域で活躍するエグゼクティブにインタビューし、その人が実績を出している裏側にある考え方を解き明かしていく連載。
第7回は、金融業界からファッション業界のZOZOへ2007年に中途入社し、内部監査や経営管理、EC事業などを経て、2021年に取締役兼COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)に就任した廣瀬文慎氏が登場する。管理側と事業側をリードした異色の経験やそこでぶつかった逆境、新たに取り組んでいる挑戦などについて聞いた。
第7回は、金融業界からファッション業界のZOZOへ2007年に中途入社し、内部監査や経営管理、EC事業などを経て、2021年に取締役兼COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)に就任した廣瀬文慎氏が登場する。管理側と事業側をリードした異色の経験やそこでぶつかった逆境、新たに取り組んでいる挑戦などについて聞いた。
金融や管理系から、未経験のファッションでブランド営業部門の責任者に
石戸 まずは、廣瀬さんのご経歴をお聞きできますか。
廣瀬 文慎 氏
廣瀬 2001年に、新卒で当時の第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に入り、4年半ほど法人営業を担当していました。
正直、銀行に入社したいという強い思いがあったわけではなく、お金のことを学んでおいたほうが将来のためになるだろうとなんとなく入ったのですが、やはりあまり合いませんでした(笑)。もともとベンチャー企業に興味を持っていたこともあり、顧客企業のIPOを支援する証券会社に転職しました。
実はそのときにZOZOと最初の接点を持ったんです。当時の社名はスタートトゥデイでしたが、私のいた証券会社を主幹事として指名してくれたので、その担当として関わったんです。
その後、証券会社の不祥事によって主幹事契約がなくなってしまったので、私も転職しようかと考え始めていたところに、現在の取締役副社長兼CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)の栁澤孝旨から声を掛けてもらいました。その後、2007年にZOZOに入社し、それから16年になります。
入社後は内部監査室の立ち上げや、東証マザーズへの上場に携わりました。それから経営管理部門の本部長となり、マザーズから東証一部への指定替えプロジェクトを牽引しました。それが2012年のことなのですが、そのときに創業者の前澤友作さんと、次にどのような仕事をしたいかという話になりました。
私はもう少し大きな組織のマネジメントに挑戦したいと話し、ZOZOTOWNに出店しているブランド様に向けた営業を行う100人ほどの部門でEC事業本部長を務めることになりました。今までの金融部門や管理部門とはまったく異なるフィールドで、ブランド様に対してZOZOTOWNで売上を上げるための提案などに4年ほど取り組んでいました。
その後、新しい仕事にも少し慣れてきたこともあり、管理部門に戻してもらい、その後再びブランド営業部門を経て、現在の取締役兼COOに至ります。現在はマーケティングやシステム開発、物流、ブランド営業、カスタマーサポートなど、ZOZOTOWNのビジネス全般を管理しています。
石戸 経営管理部門から営業部門というのは、珍しいキャリアですよね。
廣瀬 そうですね、よく変わっていると言われます。
石戸 廣瀬さんへの信頼と実績があってのことだと思いますが、社内とはいえ、なぜ未経験領域への異動にOKが出たのでしょうか。
石戸 亮 氏
廣瀬 それは前澤さんがよく決断してくれたなと、今でも思います。実際に、私が営業の本部長になると発表があったときは、さすがに社内がざわついていました(笑)。現場で働く社員には、この人で本当にいいのかと思われていたと思います。
ただ、それまでの内部監査や経営管理の視点から営業部門を見ていると、「もう少しこうしたらいいのでは」と思うことがかなりありました。私としては、そういった部分を変えていけるのではと思っていたんです。
石戸 なるほど。たしかに、私も小林製薬では内部監査のメンバーと意見交換をしています。彼らは組織全体を見ているのでニュートラルで的確な立場のため、意見を参考にしやすいんですよね。