国境は地図の上にない、心の中にある #11

ユニ・チャームのLTVは顧客が感じる「満足度の総和」、人口減少の日本で誕生した大人用おむつ「ライフリー」の秘話

前回の記事:
元ユニ・チャーム グローバルマーケターの木村氏が語る「ブランド=お客さまに対する責任の宣言」
  ユニ・チャームで30年以上に渡りマーケティングに携わり、タイ法人及びインド法人の代表などを歴任し、同社の海外の重要拠点の黒字化に成功した経験をもつ木村幸広氏。

 本連載では、世界で活躍するマーケターになるまでの軌跡を辿りながら、グローバルで成功する要件と、マーケティングに重要な消費者視点などを紐解いていく。第11回は、ユニ・チャームが超高齢化社会の日本で大人用おむつ市場にリハビリパンツを投入し成功を収めることができた要因から同氏がユニ・チャームを卒業する背景までを紹介する。
 

超高齢化社会の日本、史上初となるリハビリパンツを投入


 2017年7月、駐在していたインドから日本に戻り、グローバルマーケティング本部長として日本を含む全世界のマーケティング責任者になりました。約10年ぶりに帰国して日本で直面した課題は、人口構造が大きく変化していたことです。

 私が海外で駐在していた間に、日本は65歳以上が人口の30%を超える超高齢化社会になっていたため、大人用紙おむつを中心としたウェルネスケア事業をどのように強化するかが、より重要なテーマとなりました。そこで、今回はユニチャームが行っている事業そのものが社会貢献のためであることをお伝えするために、「ライフリーリハビリパンツ」の事例を紹介します。

「ライフリーリハビリパンツ」は、2000年にテープタイプが主流だった大人用おむつ市場に、新商品として投入されました。当時の大人用のおむつは、「人間が人生の最後に使う商品」と言っても過言ではない状況でした。

 なぜなら、大人用紙オムツは人が年齢を重ね自分の排泄がコントロールできなくなったときに使う商品だと思われていたからです。そして、一度そうなってしまったら、以前のように自ら歩いてトイレで排泄することは基本的にできないというのが、それまでの前提でした。でも、ユニ・チャームはその前提を変えたかったのです。

 当時のマーケティングチームは「大人にとってのおむつとは?」をゼロから考え直し、その存在意義を議論しました。その結果、「もう一度、社会復帰する」「ただ単に長生きすることではなく心身ともに健康的な生活を支える」を実現する商品を目指すことになり、介護されるご本人が自ら履くことで自分でトイレに行くことができるリハビリパンツの導入を決めました。
  
 

自力でトイレに行くことを推奨してプライドを守り、社会復帰につなげる


 実は、大人用パンツオムツとして、装着しやすい便利なおむつとして販売することもできたのですが、それはしませんでした。テープタイプのおむつは、自分で装着することが難しく配偶者や子どもなどにつけてもらわないといけません。

 自分が他の人の手を借りないと排泄やトイレに行けなくなった状態を想像してくだい。ベッドの上で自分の排泄物がついたおむつを例え家族といえども、誰かに交換してもらうこと。人間としてのプライドがなくなったように感じ、誰しも自信を失うと思います。生きようという気持ちもなくなるでしょうし、あたかも人形になったかのように感じるかもしれません。何のために生きているのか分からなくなるくらい、プライドがずたずたになってしまうでしょう。

 2000年当時は、「リハビリテーション」という言葉が生まれたばかりで、その頃は骨折などの怪我から復活することを指しました。しかし、おむつに頼らず自分でトイレに行けるようになることもリハビリのひとつです。それが社会復帰するために重要であると浸透させたいと考えていました。

 そこで、自分のプライドを守り、最も人の手を借りたくない行動である排泄を自ら解決するためのパンツ型おむつをライフリーリハビリパンツとして初めて発売しました。その結果、「ライフリー」は大人用おむつ市場でNo. 1のブランドになりました。
  
ライフリーリハビリパンツパッケージ

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