変革のカギを握るCxOの挑戦 #18

ファイナンスの経験がないYogiboのCFOが語る、「最初の一歩目」を踏み出すことの大切さ【取締役 CFO 小猿 雄一氏】

前回の記事:
前期比26.6%増、破竹の勢いで伸長するYogiboのリテール×IT戦略【取締役 CFO 小猿 雄一氏】
 小林製薬 執行役員 CDOの石戸 亮氏がマーケティング・DX・CX領域で活躍するエグゼクティブにインタビューし、その人が実績を出している裏側にある考え方を解き明かしていく連載。

 第9回は、学生起業やフィンテック企業での事業開発、セールスなどを経験して、2018年にYogiboに入社して、法人営業など経て、2020年に取締役 CFOに就任した小猿雄一氏が登場する。前編では、22年7月期の売上高が前期比26.6%増の212億円と、破竹の勢いで伸長している理由やどのようにブランドが確立してきたのかを紹介した。後編では、上場前の組織としての課題と今後の展開、CFOという立場からリーダーとして意識していることについて詳しく聞いた。
 

上場前の過渡期にある組織の難しさ


石戸 売上を大きく伸ばしている中で、現状の課題はどのように捉えていますか。

小猿 過渡期だと思っています。売上規模も大きくなり、もはやベンチャーという枠組みにはありません。しかし、それでもベンチャーやスタートアップのような空気感もあるので、ちょうど狭間にいると感じています。一方で、上場準備のために組織も整えているので、過渡期特有のひずみが課題だと思っています。

そのひずみを解消するためには、人材採用も考える必要があります。また、誰でも業務を回せる仕組み化も作っていく必要があります。今後の成長に向けた過渡期にあるので、日々難しさを感じています。
 
Yogibo 取締役 CFO
小猿 雄一 氏

1983年生まれ。大阪府 堺市出身。大阪市立大学在学中の2005年に共同出資で起業。2011年にネットプロテクションズに入社し、セールスや事業開発などに従事。2018年にYogibo(当時:Yogibo Japan)に入社し、2020年より取締役を務め、2022年よりCFOを兼任。

石戸 そうですよね。人材や仕組み、もしくは社内システムなどが変わるかもしれないですよね。

小猿 はい。まさに基幹システムを入れ替えようとしています。スピードが非常に重要なので、外部のパートナーを活用するのが最適ですが、内製化よりは割高です。我々は元々がIT企業の発想を持っているので、すべて内製化していました。一方で、自社ですべてを行なってきた結果、外部に任せたほうが良い部分も明確になってきたんです。

社員も200人に増えていますが、今後も採用を進めていく予定です。基幹システムや人事システムなども整えていかなければいけないと感じています。
 

現状は米国のブランドYogiboとして展開


石戸 米国のYogiboを買収しましたが、グローバル展開についてはどのように考えているのでしょうか。
 
小林製薬 執行役員CDO
石戸 亮 氏

サイバーエージェント入社、子会社2社の取締役を務め、Google Japanにおいて大手広告主のデジタルマーケティングを支援、イスラエル発のAIスタートアップ企業のデートラマでは日本市場参入を推進。セールスフォース・ドットコムによるデートラマ買収時には、日本市場におけるPMIをリード。2020年4月からパイオニアの全社CDOやカンパニーCMOとして非上場後の再成長期に従事。小林製薬では2021年よりデジタル戦略アドバイザーを務め、2023年より同社へ入社し、CDOとして全社のDX推進を牽引している。ノバセルの事業戦略アドバイザーも兼任。マーケターやIT企業、スタートアップ企業の集まる東京タワー近くの肉バル「Trim」のオーナー。趣味はキャンプ。

小猿 米国のブランドなので、やはり米国市場でのポジションを重視しています。今は米国の売上比率は日本よりも低いですが、市場は大きく可能性を秘めています。日本でのマーケティングやブランディングの成功例をきちんと真似すれば、日本よりも確実に売上は上がると思っています。

石戸 
経済的に勢いのあるアジア圏も視野に入れているのでしょうか。

小猿 はい、台湾や韓国、タイ、シンガポールには販売代理店がいます。特に視野にあるのは東南アジアです。我々の経験上、「リテール×IT」が重要なので、その地域のIT企業、もしくは財閥系企業と組んで展開するのが成功パターンだと考えています。
  
Yogibo Store 銀座1丁目柳通り店(画像提供/ Yogibo)

石戸 それはダイナミックな展開になりそうで、ワクワクしますね。米国のYogiboを買収しているので、台湾や韓国、タイ、シンガポールのライセンスを自社に移すこともできますよね。

小猿 はい、できます。しかし、日本にライセンスを移した瞬間に米国のブランドではなくなる気がします。現時点では「Yogibo=米国ブランド」として展開していく形を考えています。
  

石戸 なるほど、そうですか。

小猿 ただ、今後展開していく中で「Yogibo」というブランドが日本のブランドとしたほうがビジネスとして良いと判断したときには変えると思います。もともとは米国のブランドなので、現状は変えることは考えていません。

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