ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #10

シリコンバレーのベンチャキャピタリスト 宮田拓弥が、日本企業に見出している価値と可能性【聞き手:ニトリ田岡敬】

大手企業との提携で、ベンチャーに資金以外のアセットも提供したい

田岡 宮田さんは、パナソニックや任天堂などの日本企業と新しい取り組みをスタートしています。どのような背景があるのでしょうか。
 
編集部 注:
スクラムベンチャーズは、2018年3月にパナソニックと新規事業の創出を目的とした新会社BeeEdgeを設立。また、4月には任天堂と共同で「NIntendo Switch」を活用したテクノロジーを発掘する企画「Nintendo Switch + Tech」をスタートした。

宮田 さきほどお話ししたように、日本のベンチャー起業にも優秀な人が増えているものの、割合ではまだ少ない。優秀な人の多くは大企業にいるため、そういった人たちと一緒に仕事がしたかったという理由がまずあります。

 そして昔はライバル企業と言えば、同業界の企業でしたが、現在はまるで違う企業がライバルになり得る時代です。例えば、自動車メーカーのライバルは、かつては同じ自動車メーカーでしたが、いつの間にかUberが台頭し、気づけばトヨタ自動車以外のメーカーは時価総額が抜かれてしまった。これと同じ現象は、全ての業界で起こります。そこで、さまざまな業界に精通している僕らにも、何かお手伝いができると考えているんです。



 また、別の理由もあります。これは、ソフトバンクの手法に影響を受けたのですが、彼らは投資先に資金だけではなくビジネスも一緒にもたらしています。つまり、パートナーとして、営業先など売上を持ってきてくれるんです。実際に投資される側の会社に聞いても、「売上をもたらしてくれるVCは最高だ」と言います。

 昔は金や債券に流れていた資金がベンチャー企業に入っているため、金余りになるベンチャーも出てくるでしょう。そうなると資金力やブランドだけでなく、売上をもたらすなどの“実弾”がなければベンチャーに投資ができなくなります。

 現在の僕たちは、まだ力をつける段階ですが、大企業と関係を構築して、ベンチャー企業にそのアセットを提供できるようにしたいと考えています。
 

30代で数億円持つような人を増やす

田岡 大企業にいる優秀な人を育てる、刺激するということもプログラム化しているのですか。

宮田 まさに、パナソニックと合弁会社を立ち上げたのは、それを考えてのことです。パナソニックには、良質なR&Dのコア技術があるにもかかわらず、なかなかそれが目に見える形で世に出ない。

 そこで、合弁会社としてBeeEdgeを設立しました。資本の51%は僕らが提供し、パナソニックが49%となります。BeeEdgeが、パナソニック発のスタートアップをインキュベートし、目指すのは、この試みを通して成功者(=お金持ち)が出ることですね。

田岡 ストックオプションなどで、個人が株を持つようにするということですね。

宮田 そうです。一般的にサラリーマンの生涯年収は3億円と言われますが、起業してバイアウトすれば3億円や4億円はすぐに稼げます。60歳になってようやく退職金をもらうのではなく、30代で数億円持った方が人生は面白いということを分かってもらいたいです。

田岡 任天堂とは、どのような取り組みをされているのですか。

宮田 任天堂では、大成功している「Nintendo Switch」の将来のカタチを一緒につくるパートナーを探しています。詳しいことはお話しできないのですが、一つだけ言えるのは、世界中に面白い会社があるということです。

 以前は、そうしたユニークな会社が自然と日本に集まってきていたのですが、今はこちらから探さないといけません。しかしラッキーなのは、世界中の人が任天堂やマリオが大好きで、寿司も美味しいしといった具合に、日本が世界中から愛されているということ。日本企業は、どんどん外に出ていけばいいと思っています。

田岡 これからも日本の会社との取り組みは続けていかれるのですか。

宮田 はい。今後、スポーツに関連した事業やFinTech、小売の未来を考えるプロジェクトなど、新しい取り組みを発表していく予定ですので、楽しみにしてください。
 
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