国境は地図の上にない、心の中にある #12

ユニ・チャームの退職後、ペットビジネスに大きな可能性を感じた背景

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 ユニ・チャームで30年以上に渡りマーケティングに携わり、タイ法人及びインド法人の代表などを歴任し、同社の海外の重要拠点の黒字化に成功した経験をもつ木村幸広氏。

 本連載では、世界で活躍するマーケターになるまでの軌跡を辿りながら、グローバルで成功する要件と、マーケティングに重要な消費者視点などを紐解いていく。第12回は、ユニ・チャームを卒業してからのこと、現在力を入れているペットビジネスのマーケティングを紹介する。
 

インドのグルガオンが繋げてくれたアルダとの縁


 ユニ・チャームの卒業後は、マーケティングのコンサルティング会社として木村グローバルマーケティングをつくりました。タイやインドでの経営やマーケティングの経験を活かして、企業のビジネス課題の解決を支援しています。その事業の一つとして、アニマルヘルステックカンパニーであるA’ALDA社(以下、アルダ)の最高マーケティング責任者(CMO)も務めています。

 アルダは2019年に奥田昌道代表が設立したアニマルヘルステックカンパニーです。2021年にはインドの首都デリーの南西に位置するグルガオンに外資系企業では初となる、ペットのホテルやトレーニング施設などを併設する動物病院(DCC Animal Hospital)を開院しました。

 グルガオンにはユニ・チャームのインド本社があります。そのご縁から、帰国してからアルダのメンバーと交流していました。私がユニ・チャームの卒業の挨拶メールを送ったところ、「一度、奥田昌道代表に会ってもらえませんか」と返事をいただいたのです。インドでゼロから事業を立ち上げた奥田代表に一度お目にかかりたかったのでお会いすることにしました。

 奥田代表は現在29歳の若さです。高校生の頃は球速140キロの左腕投手として活躍し、プロ野球のスカウトが見に来るほどでした。高校卒業後は慶應義塾大学の野球部でプロを目指していたのですが、大怪我をして断念。落ちこんでいた彼を癒そうと、お母様が犬を飼いはじめたそうです。

 愛犬と暮らしながら、徐々に強いメンタルを取り戻した彼はペットに関わる仕事をしたいと強く思うようになりました。大学卒業後、一度は証券会社に就職したものの、その思いを諦めきれず、元々立ち上げメンバーであったペット専門メディア「PECO」に戻りました。そこでは、メディアのグロースに携わり、そのあと独立を志向してアルダを立ち上げました。

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