人生100年時代により変わるビジネス人生の設計 #05

人生100年時代、企業はどう個人に向き合うべきか【デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘】

日本企業が成長するために必要なこと

 私は大きく3点あると思っています。「カスタマーファースト思考へのシフト」「個人の力の結集」「デジタルシフト」の3つです。

 第1は、「カスタマーファースト思考へのシフト」です。リーマンショック後、欧米企業の多くはカスタマーファーストというビジョン、理念を掲げるようになりました。カスタマーファーストは、顧客第一の考え方を全社員が持つということです。従来の機能効率性を重視したピラミッド型組織の否定でもあります。

 そして、第2の「個人の力の結集」です。2010年代に急成長を遂げるIT企業は、組織がフラットでプロジェクトが並列で並ぶ組織へと変わります。従来のピラミッド組織では、経営層、経営企画部が会議を重ねて年度方針を決め、各組織に役割を割り振り実行させていく形を取ってきました。日本でも高度成長、バブル経済時代に結果を出してきた方法です。しかし、これは当時の世界がまだ広く、国単位の経済で考えられる時代に、米国というお手本があったからこそ成り立ったほう方法だったから効率よく結果をだすことができました。現在では世界は狭くなり、経済は各国が深く連動しながら成り立ち、また、全世界的に先行き不透明となってきた時代には、フラットなプロジェクトが現場から多く発生してくる組織の方が、圧倒的に有利な時代なのです。



 そして、最後に「デジタルシフト」です。第1のカスタマーファースト、第2の個人の力の結集を可能にするのが、企業のデジタルシフトです。顧客第一で企業が行動するためには、顧客のことを企業が理解することが必須です。現代では、殆どの人々はネットに繋がっています。そこから顧客のニーズを引き出していくためには、企業は積極的にデジタルを活用することが必須になります。また、フラットでプロジェクトが沢山増えてくると組織は、バラバラになっていきます。そのため、常に情報を共有し、意思決定がガラス張りである必要があります。それを実現するのも、社員一人一人がネットに繋がっていることを最大限に活用する必要があります。その観点からもデジタルシフトしない企業は、これからの時代生き抜いていくことは難しいと思います。
 
 この様な変化の中、企業はどう変わり、そしてどう個人と向き合っていけば良いのでしょうか。企業は、まず世の中が大きく変わったということをしっかりと認識する必要があります。具体的には、経営者が過去の成功体験を捨て企業を変える決意をすることから始まります。

 しかし、これは並大抵のことではできません。なぜならば、経営者こそ一番の成功者であり、成功体験の持ち主だからです。歴史のある大企業ほど、この傾向は強いと感じます。しかし、企業は、やはり経営者が変わらなければ変わりません。

 経営者が今の時代の変化をしっかりと捉え、会社を変える不退転の決意ができたならば、改革の半分が終わったといっても過言では無いでしょう。その決意ができた企業の経営者は、必ず、社内外の改革者を求めることになります。

 なぜならば、前述の「カスタマーファースト」「個人の力の結集」「デジタルシフト」は、自らの経験だけでは解決が不可能だからです。そして、その社内外の改革者達が働きやすい環境を整えることが、これからの企業に求められることなのではないかと思います。

 この連載を読んでいる多くの方々は、これからリーダーになる人が多いと聞いています。ぜひ、自らが社内起業家になると同時に、自社の経営者の意識を変える行動をしてもらいたと思っています。そして、経営者の意識を変えることが残念ながらできなかった場合は、自ら起業することを模索してもらえればと思っています。

 これからの日本をより良いものにするために。


 
続きの記事:
「昭和・平成 労働制度」の終焉、そして新しい価値観の幕開け【最終回・鈴木康弘】
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