人生100年時代により変わるビジネス人生の設計 #06

「昭和・平成 労働制度」の終焉、そして新しい価値観の幕開け【最終回・鈴木康弘】

前回の記事:
人生100年時代、企業はどう個人に向き合うべきか【デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘】
 この連載を通じて、人生100年時代に人々の人生設計が大きく変わり(第1回)、さらにIT技術の進歩による情報革命により、企業と個人の関係は大きく変わっていくこと(第2回)。その様な時代の変化の中、個人は、企業に頼らず自分のブランドを磨き、企業に依存しない人材を目指す必要があり(第3回第4回)、また企業もその変化に対応していかなければ生き残れない時代となったことを伝えました(第5回)。

 最終回である今回は、来年2019年は元号改正を迎え、平成の価値観が終わり、新しい価値観の幕開けとなる節目の年にあたり、労働環境がどのように変化し、新しい価値観が生まれ、これから個人・企業はどう進んでいくべきかについてお話したいと思います。
 

一括採用の崩壊により学生の意識が大きく変わる

 2018年10月に経団連が2021年新卒者から就活ルール廃止の方向性を発表しました。指針の廃止に踏み切ったのは、経団連に入っていない外資系企業やIT企業などの抜け駆けが広がり、人材獲得への危機感を抱く会員企業が増えたためです。

 新卒一括採用が本格的に始まったのは、1923年の関東大震災がきっかけです。震災による不況から企業に学生が殺到するようになり、企業側も筆記試験や面接といった、今でも続く入社試験の形が生まれました。

 1900年代生まれの人々にとって、当たり前のこととして考えられてきた新卒一括採用が、2021年には無くなります。2000年以降生まれの人々にとっては、当たり前では無くなるのです。

 これからは欧米のように、通年でポジションが必要なときに企業は募集をかけて、即戦力の人材を採用する傾向が強まるでしょう。そうなると学生の意識も大きく変わっていきます。学生は企業の即戦力ニーズに応えるため、在学中から企業で役立つスキルを学ぶ人材、面接で有利な個性に磨きをかける人材が増えてくることになるでしょう。
 

終身雇用、年功序列制度の崩壊により転職が増える

 終身雇用制度は、1950年の朝鮮戦争からの好景気に優秀な人材に長く勤務してもらうために終身雇用や年功序列制度が盛んに取り入れられるようになりました。

 当時は男性の平均寿命は1951年で60歳と文字通り終身雇用であり、その後も1961年に70歳となっても長らく、60歳定年老後は年金生活が当たり前の時代が続きました。それが前提になっているからこそ、一括採用で就職(社)し、若い頃は薄給でも階段式に給与もあがることで人々の安定した生活をもたらしてきました。

 しかし、これは人口の増加を前提とした制度であり、2000年代に入り人口が減少し、寿命が伸びたことで崩壊しつつあります。国は定年引き上げを企業に要求していますが、企業はどこまでこれに応えきれるのか疑問が残ります。

 これらの変化によって、若い世代は1社で勤め上げることがリスキーであると感じ、自らのマルチなスキルを身につけるため、積極的な転職を重ねる人が多くなることでしょう。


 

外国人労働者が増え日本人ホワイトカラーの競争が激化

 外国人労働者の受け入れ拡大が目的の改正入管法が2019年4月より施行され、今後、外国人労働者が増えてくることが予想されます。人口が減り続ける日本においては、必要不可欠なことであると思います。

 具体的な中身はこれからということなので、内容については詳しくは触れませんが、単純労働者が増えると同時に、優秀な外国人労働者が増える仕組みになっていくようです。

 単純労働者が増えることには、外食・小売・農業などの分野で自然に溶け込んでいくでしょうが、優秀な外国人労働者が増えることで、長らくホワイトカラー単一民族に慣れてきた企業は大きく変化し、そこで働く日本人労働者の仕事の方法も大きく変わってくると思います。上司が外国人というのも当たり前となり、仕事の進め方もグローバルスタンダードになっていくでしょう。

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