「元書店員マーケター」オススメの一冊 #04

【書評】メガネスーパー星﨑社長の「自分自身が、現場になる」という覚悟

前回の記事:
【書評】「トヨタ生産方式」こそ、企業のマーケティング担当者が学ぶべき(逸見 光次郎)

マーケターは事業責任者であるべき?

 マーケティング業界の人であれば、メガネスーパーの川添隆氏(ビジョナリーホールディングス 執行役員 デジタルエクスペリエンス事業本部 本部長)の名前を聞いたことがあるだろう。しかし、本人は(私もそうだが)自らをマーケターだとは思っていないという。

 最近、特に考えているのが「マーケティング」、そして「マーケター」の定義だ。

 私は「マーケティング」とは、①市場に自社の商品・サービスを知ってもらう、②買って使ってもらって満足してもらう、③繰り返し購入・利用してもらい、その良さを人に伝えてもらうと定義している。

 「マーケター」は、マーケティング施策を単に実行する人ではなく、企業全体の顧客戦略の中で企画から実行まで数値責任(マーケティング指標だけではなく利益責任)をもって指揮し、実行する事業責任者も含むと考えている。そうであるからこそ、海外ではマーケターが経営者になることが珍しくないそうだ。

 では、日本はどうだろうか?
『0秒経営~組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方』星﨑尚彦・著(発行:KADOKAWA)
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 この本の著者である星﨑尚彦氏は、三井物産で繊維・ファッションに関わった後、MBAを取得。独立して複数の企業でプロ経営者として活躍し、2012年にアドバンテッジパートナーズから依頼を受けたアパレル「クレッジ社」の再生に関わる。川添氏もクレッジ社のEC責任者を務めていたことが縁で、現在メガネスーパーのデジタル戦略を担っている。

 星﨑氏は、クレッジ社の再建を手がけた後、同ファンドから13年にメガネスーパーの再建を依頼される。この本では「プロ経営者とは何か?」から始まり、同社の再建の中で行われた取り組みと、その時の思いが語られている。

 私もいくつかの企業を経験してきたが、転職して最初のうちは心細いものだ。自己流だけで仕事を進めても、誰もついてきてくれない。例えば、カメラのキタムラでは、最初はEC事業の責任者として、のちに執行役員として指揮・実行する側となったが、繰り返し仮説を持って現場を見て、売り場に立ってお客さまと従業員の話を聴き、経営層とのミーティングを重ねながら、お互いの理解を深めて合意点を増やしていった。

 ニュースやネットでの情報だけ見ていると、剛腕プロ経営者に見られる星﨑氏も、実は私と同様の思いを持ちながら、取り組んでいたことがわかった。いきなり乗り込んでロジカルに解決するなんてあり得ないのだ。
 

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