ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #16

売上2億円事業を100億円規模に拡大させるアプローチ方法【オールアバウト 代表取締役社長 江幡哲也】

人材は育てるのではなく、育つもの

田岡 会社を小さな単位にするなど、腰を据えて人材育成を行っている印象を受けます。人材育成に対する思いは、何かありますか。

江幡 人材育成の考え方の大前提として、「人を育てることはできない、自分で育つものだ」と思っています。

田岡 それは、リクルート的な考え方ですね。

江幡 はい。当社のようなベンチャーであれば、創業社長の存在感が強いため、次のリーダーを育てるのは難しい仕事です。では、どうすればいいのか。そこで、育てるのではなく、育つための環境を整備する必要があると考えています。

そこで、会社を小さな単位にして、任せるようにしているんです。「一回転マネジメント」と呼んでいるのですが、最初の一回り経験するまでは私と一緒に取り組み、二回目以降は一人で取り組んでもらう方法です。

田岡 既存事業を任せることで育っていけば、いずれは新規事業も任せられる人材になっていくのでしょうか。

江幡 いえ、新規事業に向いている人、既存事業を伸ばすことに向いている人などタイプは違います。そのため、それぞれに成長できる環境を提供して、伸びてきた人材をさらに伸ばすという流れが必要です。

田岡 伸び代のある人材をどのように見出しているのですか。

江幡 スキルの前に、まずは人格を見ます。例えば、マインドが良くて、ビジョンに強く共感しているか、粘り強さがあるかなどです。そして半年ごとに成長をチェックして、どのような環境を提供すれば、さらに伸びるかをリーダー同士で議論します。リーダーとの会議の議題は半分以上が、人材についてです。

田岡 そこまで時間をとる会社は、珍しいと思います。ところで、江幡さん自ら、顧客に会う機会は多いですか。

江幡 はい。お取引だけでなく、生活者や「All About」の専門家にもよく会いますよ。

田岡 やはり実際に会われると違いますか。

江幡 そうですね。例えば、何か重要な判断するとき、実際にお客さまと会っていることで正解を導きやすいと思います。IT業界は動きが早い分野ですし、自分で実感できなければいけないと思っています。また、私の仕事は誰も想定していないことを生み出すこと。そのため、自分で実感することが大切なのです。

続きの記事:
創業から18年経った現在も「0→1(ゼロイチ)」成功する新規事業のつくり方【オールアバウト代表取締役社長 江幡哲也】
他の連載記事:
ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 の記事一覧

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録