ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #17

創業から18年経った現在も「0→1(ゼロイチ)」成功する新規事業のつくり方【オールアバウト代表取締役社長 江幡哲也】

前回の記事:
売上2億円事業を100億円規模に拡大させるアプローチ方法【オールアバウト 代表取締役社長 江幡哲也】

経営者として危機感を常に持っている

田岡 江幡さんは、「0→1(ゼロイチ)」で事業を生み出していくことが得意だというインタビューを拝見しました。とはいえ、現在は「10→100」や「100→1000」を行う役割も増えてきていると思いますが、事業の拡大に伴って、江幡さんご自身の役割はどのように変化してきたのでしょうか。
田岡 敬 氏
ニトリホールディングス
上席執行役員
リクルート、Pokemon USA, Inc. SVP、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、現職。ニトリのデジタル戦略を担当している。

江幡 意識としては、大きくは変わりません。IT業界は変化が速くパワーゲームも激しい業界です。そのなかで、私はいまだに自分たちの置かれている足場が、明日には崩れるかもしれないと思っています。実際は銀行にお金が入っているわけで、すぐに潰れるわけではありませんが、それくらいの危機感を持っているのです。
江幡 哲也 氏 オールアバウト代表取締役社長 1965年神奈川県生まれ。武蔵工業大学(現 東京都市大学)を卒業後、リクルートに入社。「キーマンズネット」など様々な新規事業の立ち上げに参画。2000年6月にリクルート・アバウトドットコム・ジャパン(現オールアバウト)を設立し、総合情報サイト「All About」をスタート。05年9月にはJASDAQ上場。著書に「アスピレーション経営の時代」(講談社)。

そういった意味で、私の認識としては、まだまだ「0→1(ゼロイチ)」なんです。先日のNTTドコモとの提携※1も、周りから見れば「10→100」に見えるかもしれませんが、私にとっては「今これに取り組まないと未来はない」くらいの危機感を抱いていました。

※1 編集部注:2018年5月にNTTドコモと資本提携。大日本印刷の保有するオールアバウトの普通株式をNTTドコモが取得。ドコモの議決権所有割合は15.96%


田岡 NTTドコモとの提携の裏には、そのような気持ちもあったのですね。ドコモとの提携の狙いは何ですか?

江幡 オールアバウトは、グループ会社含めて3500万人規模のユーザーデータを保有しています。基本的にオープンなWebサービスのため、広く誰がどのようなニーズで情報を求めているかという嗜好性の高いデータを保有していることが強みです。

一方で、NTTドコモは6500万人のデモグラフィックが明らかな個人データや位置情報を持っています。今回の提携で両社のデータを統合し、その上にさまざまなサービスを開発していく構想を打ち立てました。

田岡 具体的に、どのようなビジネスを展開していくのですか。

江幡 まずはクライアント企業の広告やECビジネスに活用していきたいと考えています。広告面では、「All About」のネイティブアドのターゲティング精度を高められます。そして広告の単価向上やクライアントの社数を増加させていきたいと考えています。

もうひとつは、まったく異なる視点です。現在のインターネット環境は、質の高いコンテンツと、フェイクニュースなど質の低いコンテンツが混在している状況です。質の高いコンテンツには、多額の制作コストが掛かっているため、そこにビジネス上の収益差異が生まれなければ、質の低いコンテンツに駆逐されてしまいます。

この状況を改善するために、質の高いコンテンツを提供しているが規模の小さなメディアに、例えば広告連携や集客、レポーティングなど、メディアのマネタイズを支援する仕組みを提供したいと考えています。

田岡 メディアがマーケティングをしていく上で、必要なサービスを提供するプラットフォームというイメージでしょうか。

江幡 そうです。インターネットの優良なコンテンツをすべて当社のメディアマネタイズプラットフォームでネットワーク化していくことに取り組んでいきたいんです。

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