ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #19

社員のインセンティブ報酬は、生み出した利益で決定。明確な評価こそ社員のやる気に【ベクトル 西江肇司】

前回の記事:
数あるPR会社の中で、ベクトルが急成長できた背景【代表取締役CEO 西江肇司】

明確な評価が「社員のモチベーション」に


田岡 ベクトルは、優秀な人材を多く抱えているように思います。優秀な人材の確保と育成について、どのように考えていらっしゃいますか。

西江 当社に何か特別な育成プランがあるわけではなく、他社と同じような研修制度がありますが、正直なところ教育しても本人の意識がないと成長しないと思います。   

 それよりも、仕事に対して適切な評価をするための「明確なインセンティブ」が重要であると考えています。インセンティブに、育成の仕組みが組み込まれていると言ってもいいでしょう。 

 当社ではインセンティブは、生み出した利益に応じて決まります。現場では、売上を基準に会話をしないようにしています。その代わり、粗利益で会話をします。粗利から販管費を引けば、利益が分かりますよね。
西江 肇司(にしえ けいじ) 氏
ベクトル 代表取締役 兼 グループCEO
1968年生まれ、岡山県出身。関西学院大学卒。大学在学中に起業し、卒業後、1993年にセールスプロモーションを事業とするベクトルを設立。2000年よりPR事業を中心とした体制に移行。さまざまな企業のPR戦略のコンサルティング、PRの手法開発を手掛けながら売上を拡大。2012年、東証マザーズに上場。2014年、東証一部へ市場変更、持ち株会社へ移行。2011年からは海外へ積極的に進出し、アジアナンバーワンを目指す。連結グループ会社は45社(2018年11月)。

田岡 明確に定義しているわけですね。

西江 「お金とは、何ですか?」と尋ねられても、答えられない人は多いと思います。ベクトルでは「お金とは、世の中に貢献したポイント」という捉え方です。役に立った代わりにお金が返ってくるという考え方です。
 

ベクトル西江社長が起業を志した理由


田岡 西江さんが最初にPRに取り組もうと思ったのはなぜだったのでしょうか。

西江 僕は子どもの頃から、広告というよりも雑誌の記事やタレントが使用しているという情報の影響でモノを買うことが多くありました。これはPRの領域ですよね。

田岡 消費者として暮らしている中から、ビジネスを発想されるということですか。

西江 そうですね。比較的、情報感度は高い方だと思うので、自然とビジネス化できるポイントが分かります。

田岡 そもそも起業しようと思ったのは、なぜですか。

西江 少年時代は野球をやっていたのですが、怪我で手術をしてから、うまくいかなくなりました。僕は13歳の頃からひとり暮らしをしていて、毎日自由に生きてきたのですが、何か真面目にやりたいなと思って、実業家になろうと決めたのです。もともと、ロックフェラーやカーネギーなどに興味があって、彼らの本を片っ端から読んでいましたし。

田岡 それにしても、13歳から一人暮らしとは驚きます。
田岡 敬 氏
ニトリホールディングス
上席執行役員
リクルート、Pokemon USA, Inc. SVP、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、現職。ニトリのデジタル戦略を担当している。

西江 深い背景はないですよ(笑)。両親との仲も悪くないですし、敷地内に一軒家があったので、そこで自由に生きていくと決めたという感じです。

田岡 自立心が強かったということでしょうか。

西江 それも、あります。一人暮らしをした経験が、現在の自分に影響を与えていると思います。なにしろ、すべてをゼロから一人で考えることができるので、周囲の影響をあまり受けずに、フラットに考えられるようになったのです。

田岡 西江さんは、実際に実業家として成功されていますが、どのような素養が向いていたと思いますか。

西江 うーん、何でしょうね。単に、現在の事業が好きなだけだと思います。子どもの頃から一流品がまとめられた事典を読んで、例えばチャイコフスキーが身につけていた時計に興味を持つなど、モノに関心を持つタイプでした。だから、現在の事業も子どもの頃と変わらず、遊びの延長のような感覚です。

田岡 とは言っても、社長業は大変だと思いますが、ストレスはないですか。

西江 あまり意識しないですよ。楽しくなかったら、やらないですから。とはいえ、広告業界でゼロから仕事をつくってきたわけで、大変と言えば大変でしたね。
 

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