伊東塾

包丁の話ばかりして、料理人の本分を忘れているマーケターが多くないか? 伊東正明【伊東塾in北海道に寄せて】

 P&Gにおいてグローバルのバイスプレジデントを務めた伊東正明氏(現:𠮷野家 常務取締役)による、実践を重視したマーケティング研修プログラム「伊東塾」の北海道・札幌での初開催が決定(詳細は、こちら)。それに向けて、伊東氏に現代のマーケターに求められること、「伊東塾 in 北海道」に期待していることなどについて話を聞いた。
 

「消費者を満足させること」がマーケターの本分


——「伊東塾」を東京、大阪、沖縄と1年間にわたって開催してきました。どのように感じていますか。

参加者からは、伊東塾に参加して「学びが多かった」「楽しかった」と言っていただけますが、私としては皆さまがさらに実戦で使えるように、常にプログラムをアップグレードしていきたいと思っています。

——昨今のマーケティング業界をみて、伊東さんが課題として感じていることはありますか。

そうですね。最近のマーケティング業界は、デジタル系のツールの話ばかりになっているように感じています。私はマーケターと各種ツールの関係性を「料理人」と「包丁」に例えて説明しています。

例えば、料理人が刺身をつくろうとしたとき、柳刃包丁がなければ上手に切りつけられませんよね。しかし、今は柳刃包丁に限らず、何百種類の包丁が売られている時代。それによって包丁をいっぱい揃えることに満足して、料理人であることを鍛えていない人が増えているように感じるのです。

もちろん包丁がたくさん出てくるのは、素晴らしいことです。包丁が変わると、料理も変わるため、勉強も必要でしょう。ただし、料理人の仕事は、たくさんの包丁を使いこなすことではなく、おいしい料理をつくること。食材(商品サービスの強み=プロダクトベネフィット)を理解し、それが一番お客さまに喜んでもらえるレシピ(コンセプト)を考えて調理する(ツールを使う)。道具の使い方は本当に大事ですが、その前にいい料理人になるための修行、つまり、商品・サービスを使ってお客さまをどうやって驚き・喜ばせるかの修行の方がむしろ必要だと思うのです。
伊東正明氏 P&Gにてジョイ、アリエールなどのブランド再生や、グローバルファブリーズチームのマーケティング責任者をアメリカ・スイスにて担当。直近までヴァイスプレジデントとしてアジアパシフィックのホームケア、オーラルケア事業責任者、e-business責任者を歴任。2018年1月より独立、ビジネスコンサルタント。𠮷野家 常務取締役。

——マーケターの本分は、最終的に「消費者を満足させること」というわけですね。

その通りです。最近、P&G時代の先輩である西口一希さんの著書『たった一人の分析から事業は成長する 実践・顧客起点マーケティング』を読みましたが、何よりも顧客が満足するプロダクトアイディアをつくろうという姿勢に感銘を受けました。

マーケティングオートメーションやデータベースはじめテクノロジーの活用は、とても大事なことです。ただし、それだけに注力するのは、「お客さまが過去注文したことがあるメニューの販売数と天気などからAIを使って最適化したお品書きをつくりました」という飲食店に近いと思います。皆さん、そんなお店に行き続けたいですか。

——伊東塾は、まさにマーケターとしての腕を磨く場ですよね。

大事なのは、企業が継続的に“儲け続ける”ために、ものづくりから販売促進まで本気でお客さま視点で考えるということです。ただ、そうお伝えするだけでは概念的過ぎて分かりづらいと思うので、伊東塾ではその“儲け続ける”ということがどういうことなのか、分かりやすく紐解いています。
 
P&Gでの20年間で生まれたフレームワークを伝授
「伊東塾in 北海道」詳細は、こちら

 それは、つまり経営・ビジネスに関わる全ての人が持つべき視点であって、マーケティング部門はもちろん広くビジネスパーソンに役立つものだと思っています。顧客視点の経営こそ、マーケティングの本質なのです。
 

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