マーケティングアジェンダ2019 レポート #03

楽天 最年少常務はどう誕生したのか、自分をアップデートさせるための方法

権限移譲が、自分にとって最も高いハードルだった


山口  30代になると、より大きな組織を統括する立場になられました。でも河野さんはもともと、ポジションを上げることには興味がなかったんですよね。

河野  まったくありませんでした。自分の思ったことを形にできる現場が、あまりにも大好きで。当時は、「上層部の政治に巻き込まれたくない」という思いすらありました(笑)。

山口  現場が大好きで、しかも結果を出している優秀な人がリーダーになるって、大変なんですよね。

河野  権限移譲することが、自分にとって最もハードルが高くて。わかっていてもできない時期が長かったですね。一回やり始めれば、癖がつくのですが。



山口  変わったきっかけは、どんなことだったのですか。

河野  私の場合は、「物理的に一人でやりきれなくなった」ということですね。13くらいの業務を兼務していた時期があって……マイクロマネジメントをしたり、直接現場に入ることができなくなったりしたことで、視座を上げざるを得なくなったんです。

権限移譲できない私に、上は気づいていたのだと思います。そのときに、権限を奪うとか、仕事を減らすのではなく、視座が一段上がるように、あえていろいろなものを見せるというやり方をしたのだと思います。

「この人のキャパシティはここまで」と蓋をするのではなく、次のステージに行くためのチャンスを与える会社にいられたのはラッキーでした。

ちょうど権限委譲を覚え始めた頃、私の部署に新卒社員が7人入ってきました。果たして彼らに任せられるだろうか……と不安に思いつつ、これからのモバイルをつくっていくためには彼らの感性が不可欠だということもわかっていました。

そこで、私の経験と彼らの感性、どちらの判断が結果につながるか勝負してみたんです。翌朝結果が出て、そのときは無事に私が勝てたのですが(笑)、一方で自分にない視点を知れたことにすごく感動して。必要に応じて世代交代することや、若い社員が経験を積むことの大切さを覚えた機会でもありました。

※後編「楽天 三木谷社長の右腕・マーケターは、いかにして生まれたか?」に続く
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