BACKSTAGE #02

平成から令和へ。次代のマーケターに必要なのは、簿記2級とビジネス脳

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体験型マーケティングのカンファレンス「BACKSTAGE 2019」が8月29日開催【読者限定30%オフクーポン付き】
 体験型マーケティングイベント「BACKSTAGE 2019」が8月29日、虎ノ門ヒルズで開催された。その中のひとつのセッションとして「こんにちは『令和』。平成マーケティング業界の振り返りと、未来に繋げること」と題して、インテージホールディングス・小金悦美氏、バカルディジャパン・須田伸氏、コメ兵・藤原義昭氏の3人が登壇し、平成の30年間に起きたマーケティングトピックを振り返りながら、令和時代のマーケティング業界で大切なこととは何かを探った。
 

マーケターに求められるハードルが上がっている

 
左からコメ兵 執行役員マーケティング統括部長 藤原義昭氏、バカルディジャパン マーケティングディレクター 須田伸氏、インテージホールディングス アルゴリズム事業準備室 室長 小金悦美氏、ナノベーション「アジェンダノート」編集長 兼 コンテンツディレクター 陰山祐一氏(モデレーター)

――まずは、それぞれが考える「平成の30年間」に起きたマーケティングトピックをお聞かせください。

須田 
ひとつ目のトピックは、「テレビCM崩壊、せず」です。私は平成初期から8年間、博報堂の広告プランナーを経験し、その後サイバーエージェントでアメーバブログのプロモートなどを行ってきました。その間に「CMが効かなくなった」と言われるようになり、デジタルメディアの登場で2006年には『テレビCM崩壊」という本が出版されました。

ただ、少なくとも平成の間に、テレビCMは崩壊しなかったと思います。グーグルやヤフーなど、CMが崩壊すると言われる論拠となったデジタルメディアがCMをたくさん打っているのがその証拠かなと。若年層がテレビよりNetflixやAbemaTVを利用する今、テレビCMも新聞のようにお年寄りのメディアに変わってしまうのか、それとも踏ん張りが続くのか見極めたいです。

2つ目は、「オンラインCGMの誕生と爆発的成長」です。mixi、アメーバブログ、Twitter、Facebook、Instagramなどが成長することで、一般の生活者の意見がマスメディアや広告主が発信するものと肩を並べるほどのインパクトを持つようになったというのはエポックだと思います。あおり運転の事件がありましたが、車載カメラもある意味CGMで、そこで撮られたものがYouTubeやTwitterにあがり、ネガティブな言葉ですが、「監視社会」が実際に到来したのではと感じています。

3つ目は、「企業の本当の姿を見せること」が必要になったこと。昔は斬新なアイデアが生まれたら、それが実現するまでクライアント間を渡り歩いて提案していましたが、いまの消費者は企業の本質を見ているので、衣装みたいなものを着替えてもすぐに見抜かれてしまうようになりました。
須田伸氏
バカルディジャパン Marketing Director
大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1992年より博報堂制作局にてCMプランナー/コピーライターとして8年間勤務。Yahoo! Japan、サイバーエージェント、Facebook Japan、エアウィーヴを経て、2017年よりバカルディジャパンに勤務。著書に『次世代広告進化論』『次世代広告テクノロジー』『時代はブログる!』など。

藤原 私からは、まず平成から令和に向けて「マーケティング=経営」の考え方に変化してきたことを挙げたいと思います。もともと「マーケティング=広告・販売促進」という風潮が嫌いで、マーケティングは経営だと言い続けてきました。でも、経営の経験がない人にそう言っても分かるわけがないので、どうやって伝えたらいいか悩んでいます。

それから、この1年くらいで急激にリテールのマーケティングにテクノロジーが入ってきたので、パートナー会社にとってはチャンスかもしれません。また、「ビジネスデザイン思考」がマーケティング活動の上で重要になってきたことも変化だと思います。

ようは3年後、5年後にどう利益を上げるかを考えることが大事です。そのために、大きい組織だと分かれているかもしれませんが、PR・広報・広告の部署は一緒になって戦略を考えていったほうが良いと思います。
藤原義昭氏
コメ兵 執行役員マーケティング統括部長
1999年コメ兵入社。2000年自社ECの立ち上げをし、物流からささげ業務まですべてを構築する。現在はデジタルマーケティングの統括、情報システム部門トップも兼任し全社ITを統合しデジタルとリアルの融合を推進している。

小金 インテージはデータ屋なので、私からはデータを軸に話させていただきます。平成は、まず「データ収集」で変化が起こりました。マーケティングリサーチ業界もデジタル化が進み、2000年頃からインターネットリサーチが本格的に始まりましたが、その頃からデータは「集める」から「集まる」時代に変わったんです。インターネットのアクセスログが最たるもので、タイムスタンプ付きで足跡がわかる時代になり、その結果、データからわかる世界も変わってきました。

その反面、データを使いこなせないという経営課題も増えています。そこで注目されているのが「データサイエンティスト」です。リーマンショックを経た後の2012年にHarvard Business Reviewで「データサイエンティストが21世紀で最もセクシーな職業」だと言われたことで注目され始めたとも言われています。

その後、日本国内でも人工知能や機械学習のブームが到来しました。この人工知能や機械学習といったAIが動くための頭脳アルゴリズムをつくるのはデータサイエンティストなので、 AI時代が始まったのがまさにこの直近です。

デジタル化に伴い、データの種類・量が増えたことで、当社への期待も変わりました。各種データをどう価値化するか、意思決定にどう活用すべきか、といったご相談が増えています。
小金悦美氏
インテージホールディングス アルゴリズム事業準備室 室長
2001年、インテージ入社。化粧品・飲料・食品の大手クライアントを中心に、マーケティング施策支援の伴走に携わる。2017年よりアライアンス・CVC領域の実務責任者として、当社グループアセットを活かした最新技術や新規事業分野の開拓に従事。2019年4月1日より現職。お客様のデータ活用支援を通じて、人が人らしく働くためのAI活用とは何かを探っている。

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