リテールアジェンダ2019 レポート #02
「セブンがやらないことをやる」ファミリーマート 澤田貴司社長が明かす躍進の一手
国内外のリテールのマーケターとメーカーのマーケターをつなぎ、一気通貫のマーケティングを実現するための合宿型カンファレンス「リテールアジェンダ」が12月上旬に大磯プリンスホテルで開催。キーノートセッションに登壇したのは、ファミリーマート 代表取締役社長の澤田貴司氏。
前編に続き、後編ではファミリーマートがどう競合他社と差別化を図っているのか。そして昨今のファミペイはじめデジタル戦略をどう構築しているのか。店舗を重視しながら、マーケティング領域でも改革を推し進める同氏に、日本マクドナルドのV字回復の立役者の一人として知られ、現在は「ポケモンGO」で知られるナイアンティックでシニアディレクターを務める足立光氏が迫りました。
前編に続き、後編ではファミリーマートがどう競合他社と差別化を図っているのか。そして昨今のファミペイはじめデジタル戦略をどう構築しているのか。店舗を重視しながら、マーケティング領域でも改革を推し進める同氏に、日本マクドナルドのV字回復の立役者の一人として知られ、現在は「ポケモンGO」で知られるナイアンティックでシニアディレクターを務める足立光氏が迫りました。
マーケティング戦略は「インナー重視」
足立 澤田さんが入られてから、ファミリーマートのマーケティング活動はずいぶん変わったなという印象があります。正直なところ、これまでのファミリーマートは、これといった明確な印象、ポジションや強みがないように思うんです。
業界の雄であるセブン-イレブンが明確なポジションを築くことに成功しているとすれば、それに対してどう差別化していこうと考えていらっしゃるのでしょうか。
足立 光 Hikaru Adachi
ナイアンティック シニアディレクター
プロダクトマーケティング P&Gジャパン、シュワルツコフ ヘンケル社長·会長、ワールド執行役員などを経て、2015年から日本マクドナルドにて上級執行役員マーケティング本部長としてV字回復をけん引。2018年9月より現職。I-neの社外取締役、ローランド·ベルガーやスマートニュースのアドバイザーも兼任。著書に「圧倒的な成果を生み出す『劇薬』の仕事術」、「世界的優良企業の実例に学ぶ『あなたの知らない』マーケティング大原則」。オンライサロン「無双塾」主催。
ナイアンティック シニアディレクター
プロダクトマーケティング P&Gジャパン、シュワルツコフ ヘンケル社長·会長、ワールド執行役員などを経て、2015年から日本マクドナルドにて上級執行役員マーケティング本部長としてV字回復をけん引。2018年9月より現職。I-neの社外取締役、ローランド·ベルガーやスマートニュースのアドバイザーも兼任。著書に「圧倒的な成果を生み出す『劇薬』の仕事術」、「世界的優良企業の実例に学ぶ『あなたの知らない』マーケティング大原則」。オンライサロン「無双塾」主催。
澤田 セブン-イレブンは業界のリーディングカンパニーであり、非常に優れた企業です。しかし、それと同じことやっても絶対に勝てっこありません。いかに違うことやっていくかがカギだと思います。
2つ実践していることがあって、一つは、コミュニケーション活動ではセブン-イレブンが絶対にやらないことをするということ。もう一つは、社内に必ずある「優れているのに埋もれてしまっている商品」をピックアップして強力に打ち出すということです。
例えば、「ファミチキ」のプロモーションはその一例です。ファミリーマートで最もコンスタントに売れており、廃棄率が低く、利益率が高い商品。社内では誰もがその価値を知っているのですが、もっと対外的にアピールしようということで、2017年にプロモーションを強化しました。
クリエイターの福部さん(catch クリエイティブディレクター 福部明浩氏)の手による、ファミチキを擬人化した「ファミチキ先輩」を前面に打ち出したシリーズCMです。
足立 「正統派」「優等生」のセブン-イレブンに対し、おちゃめでいたずらっ子なファミリーマート、といったところでしょうか。
澤田 その雰囲気は、狙っています。「ファミチキ先輩」は、結果的に店舗参加型キャンペーンになっていったのが良かった。クリスマスセールをはじめとしたシーズナルのイベントや、博多どんたくなど地域の催し物の折に、「ファミチキ先輩」の被り物を、社員や店舗オーナー・スタッフがこぞって被るようになったんです。
同様に、フローズンドリンク「フラッペ」も打ち出しを強化した商品の一つ。2019年にはフラッペのつくりかたがわかりにくいという声に応えて、フラッペのつくりかたをタレントの香取慎吾さんがダンスで説明するCM「ファミマのフラッペつくりかたダンス」篇を制作。各加盟店のスタッフの皆さんにも、CM中のダンスの「踊ってみた動画」を撮影し、ハッシュタグ「#ファミマのフラッペつくりかたダンスチャレンジ」つきでTwitterに投稿してもらいました。
足立 ファミチキのほうはお客さまに向けた差別化施策ですが、フラッペのほうはどちらかというと加盟店向け、つまりインナー向けの施策も強化していますよね。
澤田 はい。インナー向け施策という意味では、「うまいパン決定戦」も印象に残っています。特定のテーマを決めて総菜パンをメーカーさまに企画開発してもらい、最もお客さまからの人気が高かった商品のキャンペーンを展開するという、メーカー対抗のコンテスト企画です。計9社のメーカーさまが参加してくださり、店頭展開においては各加盟店にも大いに協力してもらいました。
足立 メーカーや加盟店との関係づくりに、かなり力を入れていらっしゃいますよね。
澤田 はい。私は特に約300人の店舗オーナー・スタッフとLINEでつながっています。日々あちこちの加盟店を訪問するのですが、訪問後に温かいメッセージをいただくことが多く、とても嬉しく思っています。