マーケティングアジェンダ

スマホでできる精子セルフチェック「Seem」に学ぶ、イノベーションの起こし方【前編】

ジェンダーイコールに資することも、評価につながった

馬渕 萩原さん、開発したサービスを普及させていくにあたって、クリエイティブについて気を付けていたことはありますか。

萩原 サービスのアイデアを入澤から聞き、開発中の段階からコミュニケーションのことを制作担当のメンバーと考え始めました。確かにセンシティブな問題ではありますが、入澤はユーザーの方への配慮を、サービス全体で設計し尽くしていると感じていました。ですから、彼の思いをそのまま形にしていくことは念頭に置いていましたね。





馬渕
 「カンヌで賞を獲れるぞ」という感触は、どの段階からありましたか。

萩原 近年のカンヌは、「コミュニケーションは、課題を解決するもの」と捉えています。それゆえ、クリエイティブの表現手法だけを評価するのではなく、課題を解決するソリューションそのものも価値を評価する方向に変化しているのです。課題を解決するソリューションの開発といえば、創業以来、リクルートが事業を通じて実践し続けてきたことです。

馬渕 なるほど。カンヌでも重視されているテーマのひとつに「ジェンダーイコール(男女共同参画)」があります。「Seem」開発の背景にも、男性がなかなか医療機関を受診しないために、不妊治療にコストや時間がかかりがちであるという問題がありました。不妊治療において、男女の間にあったそんな格差を是正し得るということも、「Seem」が高く評価された要因のひとつと言えそうです。

萩原 世界情勢の影響もあってか、2017年のカンヌではジェンダーイクオリティに関する議論が活発でした。今日の会場を見渡しても、女性はやはり少ないと感じるのですが、政権や企業の中枢に女性が少ないということがまさに問題視されていたのです。正直なところ、あまり意識してはいませんでしたが、日本においては不妊治療の現場でも男女不平等の実態があるという問題提起が、審査員に響いたという声も聞きました。

馬渕 海外では、男性の不妊治療への参加はもっと積極的なのでしょうか。

入澤 そうですね。日本は特に、男性の参加が遅れているんです。ヨーロッパでは男女で一緒に治療することが多いそうです。

日本では、検査の結果、男性に問題があることがわかると男性側の母親が怒鳴り込んでくるケースもあったと聞いて驚きました。

馬渕 えっ!なぜ?

入澤 「うちの子に問題があるはずない!いい加減な検査をするな!」と…。いまの30代くらいの方になると、最初から夫婦で受診する人も増えていると聞くのですが。

後編「プロジェクトの具体的な進め方/ブランド最大の価値はストーリー」(6月20日公開)に続く
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精子セルフチェックサービス「Seem」に学ぶ、イノベーションの起こし方【後編】
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