リテールアジェンダ2021レポート #02

「本気で日本一のコンビニを目指す社員」が現れはじめた、ファミマ改革の裏側

前回の記事:
【ファミマ 足立光・スケダチ 高広伯彦】 マーケターは、真の「マーケティング」のために、他部門への影響をあきらめてはいけない
  2021年10月、東京都内でリテール領域のマーケティングをテーマにしたカンファレンス「リテールアジェンダ2021」が開催。ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)の足立光氏をスピーカーに迎え、スケダチ 代表の高広伯彦氏がモデレーターを務めたキーノート「ファミマのマーケティングの“今”」のレポート第二弾をお届けします。(第一弾はこちら
   
 10月18日に発表した新プライベートブランド「ファミマル」など、ファミリーマートの新しい戦略には、組織としての強みづくりやマーケティングの再定義があったと言われます。足立氏は何をどのように考えてファミリーマートを牽引しているのか、そして今後何を目指しているのか、その思考を深堀りしました。
   

リテールに必要なマーケティング

高広 足立さんがファミリーマートに入社して1年が経ち、俯瞰して見ると小売企業に必要なマーケティングはどういうことだと思いますか。

足立 リテール(小売)のマーケティング、またはビジネスはとても複雑なんです。販売している商品の数が圧倒的に多いから1つか2つヒットしようが、ほとんど売上に影響しません。だからすごく難しいと感じています。一方で、だからこそリテールにマーケティングが必要なんだと思います。
   
足立光
ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)
  
 次に、関わる人がすごく多い。社員もですが、サプライヤーさん、お客さまも数多くいらっしゃるわけで、すごく複雑です。そういう意味で企業の方向性として、いま来店していただいているお客さまを裏切らないことはベースの上で、もっと多くのお客さまにとって「来店する理由」をつくることが重要だと思っています。

 ファミリーマートは、まだまだ明確に来店いただく理由が少ないと思っています。私が目指しているのは、近くにコンビニが何軒かあり、そのなかにファミマがあったとしたら「あ、ラッキー!」とお客さまに思っていただけるような状態です。タクシーを待っている時に、背の高いタクシーが来たら、「あ、ラッキー」と思うじゃないですか(笑)。あの感じです。

高広 いまの話を聞いていると、もしかするとマーケティングはプロモーションのイメージが付き過ぎているから、教科書に書いてある正しいマーケティングが実施されない。なので、マーケティングという仕事自体のリブランディングが必要ではないかと思いました。

 もし足立さんが本当の意味での「マーケティング」について、マーケティング以外の名前をつけるとしたら何と言いますか。

足立 私の部署としての責任は、販促コミュニケーションです。ただ、先ほどから何度も言っているように値段や商品も含めて社内外に影響を及ぼしていく仕事なので、米国的に言うと、ビジネス・デベロップメントが近いかもしれない。

高広 事業開発、いわゆるビズデブですよね。
    
高広伯彦
スケダチ 代表
 
足立
 はい、ビズデブには事業開発だけではなくて、いまのビジネスをどう伸ばすかも含まれますよね。それを含めたものが、いわゆるマーケティングだと思うんですよ。

 米国の一部の会社ではCMOではなくて、チーフ・ビジネスデベロップメント・オフィサー(CBO)、またはチーフ・グロース・オフィサ-(CGO)と言われています。CMOが本当にしなければいけないことを考えると、そっちのほうが意味としては正しいと思います。さまざまな会社でそれぞれの定義があるから、統一するのは無理があると思うし、そこは期待していないです。

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