マーケティングアジェンダ2021外伝 #04

本当の「インサイト」はどこにあるのか? 吉野家伊東氏、デコム大松氏による”お客様訪問インタビュー実践講義”【マーケティングアジェンダ2021レポート第四回】

前回の記事:
ライフクリエイト前川氏、元西友富永氏「ある経営者の人間理解についての考察」から人間理解の本質に迫る【マーケティングアジェンダ2021レポート外伝_第3回】
 キラメックスでマーケティングを担当している福田保範です。2021年10月27日から3泊4日で行われたマーケティングカンファレンス「マーケティングアジェンダ2021」に参加しました。キーノートとラウンドテーブルディスカッションがとても参考になる内容でしたので、いちマーケターとしての見解を入れつつ全4回に渡りレポートします。
  
第4回目となる今回は、ラウンドテーブルディスカッション「消費者インタビューで感想戦!本当の『インサイト』はどこにあるのか?」をレポートします。ラウンドテーブルディスカッションは、吉野家 常務取締役の伊東正明氏、デコム 代表取締役の大松孝弘氏が登壇。実際のインタビューを見てインサイトを見つけ、売れるコンセプトを見つける実体験をするという内容でした。
   
「このセッションが印象に残った」という声も多数聞かれ、ラップアップでもファミリーマートCMOの足立光氏や大松氏から、「改めて生の声から得られる知見が大切」という意見もあったことから、非常に有益なセッションであったと感じます。既に顧客リサーチの経験が豊富な方も、重要なTipsが散りばめられていたのでぜひご覧ください。(これまでのレポートはこちらから ご覧ください)
    

インタビューお題の整理

        
 こちらのディスカッションは、消臭剤としておなじみの「ファブリーズ」の使い方を、実際のお宅訪問インタビュー動画10分×2人分を見てインサイトを掘り当て、プロモーション案を立てるという内容です。この後の内容がより理解しやすくなるよう、まずは前提について簡単にまとめます。

 <「ファブリーズ」の前提>
 
  • 「布の匂いをとる」ということに価値を発見されたのは最近のことで、今までの生活では消費者から目立って必要だとは思われていたという背景。
  • 匂いは布製品から出てくる匂い分子が原因。壁や布に吸着してそれが空気中に撒き散らかされることで匂いが発生しているという事実。
  • 人は匂いに5分くらいで慣れてしまう(毒がなかったら無反応になり、匂いを感じなくなる)という検証結果。
  • 既に大半の家には「ファブリーズ」はある。眠っている「ファブリーズ」の消費を促し続ける必要があるという課題。

 <課題解決のフレーム>
    

     
「ファブリーズ」のマーケティングでは、以下の切り口で消費量が増えると整理しました。
  • 使う世帯数
  • 使う家族のメンバー
  • 使う布製品
  • 使う部屋
  • プッシュ数

 このどれか(もしくは複数)で習慣的に使い続ける理由をつくり、それに即したプロモーションを考えるとよいというヒントです。短絡的に「売上を増やす」=「サービスを消費・利用してもらう」など、とりあえず使ってもらうためにプロモーションするという狭い発想になってしまいがちですが、この考え方だけでも非常に勉強になりました。

 ちなみに、プロモーションには以下の条件もつけられていました。
 
  • 製品は変えられない。
  • 「ファブリーズ」には匂いつき、無臭などのさまざまなラインアップはある。

 これら事前情報をもとに、お宅訪問インタビューをみんなで視聴し、その後テーブルごとのディスカッション、発表へと移りました。

 <インタビュー内容>
 インタビュー内容は、普段過ごしている部屋で1日の生活のなかで「ファブリーズ」をどのタイミングで使っているかと聞いたシンプルな内容でした。内容が簡単にまとめられた資料が配られましたので、公開しておきます(香りが出てくるシーンが強調されている点など、この資料のまとめ方も面白いですよね)。
    

     

     

       

     

伊東氏・大松氏による講義「インサイト発見に必要な情報の4要素」


 グループディスカッション・複数チームからの発表後に、伊東氏と大松氏からインタビューでのインサイト発見についての講義がありました。まず、以下の4要素を網羅することが大事と述べます。
     

       
●インタビューは話を聞くのではなく、「観察」する

 インタビューで出てくるのはエモーション(感情)が中心です。そこに至るまでに次の3つが存在します。
 
  • シーン(場面)
  • ドライバー(源泉要因)
  • バックグラウンド(背景要因)

 そして、それらはインタビュー中の家のなかの様子、家族構成・家族との関係、趣味、仕事、生活の過ごし方でしか見えてきません。

 インタビューは多少自分をよく見せようと取り繕うものですし、言葉では表現しきれないところが多いです。だからこそ聞くのではなく「観察する」ことが必要であると伊東氏、大松氏は繰り返し述べました。

●誰のためなのか?を探る

 家族によく思ってもらうため?自分だけのため?友人のため?ペットのため?など、「その人が誰のためにその行為をしているのか」も非常に大事な視点です。プロモーションを考えるにあたり、メッセージのベクトルが大きく変わります。この視点も抜けがちですね。

●何のためなのか?喜び、問題を感じる原因は一番どこにあるのか?を探る

 人生において、どのシーン、時間を一番大事にしている?寝る時?家から帰ってきた時?仕事の時?そのシーンを見極めると、途端にプロモーションの焦点が当てられるようになります。

 たとえば、夜寝る時が一番大事なのであれば、寝室・ベッド用の商品・プロモになり、落ち着きや安らぎがテーマになるわけです。

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