B2Bアジェンダ2022カウンシルメンバー特別企画

DX推進とパーパス経営に「顧客の創造」が欠かせない理由とは【クラレ 中東孝夫】

前回の記事:
「B2B企業がマーケティングを『経営ゴト化』するためには?」【日本HP 甲斐博一】
  2022年10月12日から13日にかけてBtoB企業のマーケティング部門の責任者が集結する合宿型カンファレンス「B2Bアジェンダ2022」が静岡県・浜松市(THE HAMANAKO)にて行われます。その開催に向けて、カンファレンスのカウンシルメンバーが「B2B企業がマーケティングを『経営ゴト化』するためには?」をテーマに寄稿する連載。第2回は、クラレ 経営企画室 室長補佐の中東孝夫氏がDX推進やパーパス経営などの企業の変革をするときに「顧客の創造」が必要な理由についての解説です。

 第1回「B2B企業がマーケティングを『経営ゴト化』するためには?」日本HP 甲斐博一氏
 

企業の基本的な機能は「マーケティング」と「イノベーション」

 
クラレ 経営企画室 室長補佐 中東孝夫氏

「経営学の父」「マネジメントの権威」などで知られるピーター・ドラッカー氏の有名な言葉に「企業の目的は顧客の創造である」があります。また、彼は企業には2つの基本的な機能が存在するとし、それはすなわち「マーケティング」と「イノベーション」であるとしています。これらの機能こそ、ビジネスの立ち上げや成長を生み出す企業の持つべき機能であると私も思います。

 しかし、B2B企業において、経営層にまで上り詰めた多くの人は、体系化された、再現性のあるマーケティングを意識しないで成功させてきたという経験があります。新技術による機能開発や人脈・商流の開拓、プロフェッショナル営業による案件獲得など、彼らのさまざまな成功体験により、現在の事業は形づくられています。ただし、情熱に燃えて始めた新事業も時間が経過すれば、「決まった商材」「決まった商流」「決まった顧客」など「過去の成功に頼ったビジネス」となってしまうのも必然といえるでしょう。
 

企業の変革と「成功体験のマイオピア」


 現代マーケティングの第一人者の一人であるセオドア・レビット氏が提唱している「マーケティング・マイオピア(近視眼)」という概念があります。これは、企業が自社事業の可能性を狭く解釈してしまい、市場機会を逃してしまうことを指します。同氏は、例として鉄道事業を挙げていますので、私も日本と米国の鉄道事業を比較して考えてみましょう。

 米国の鉄道会社は「駅馬車」を駆逐した成功体験によって、自社の事業を「鉄道」と定義しました。その結果、モータリーゼーションによって輸送手段が自動車へのシフトに適応できず、衰退してしまいました。一方で、日本の鉄道会社は、自社の事業を都市や商業施設の開発、不動産、バスなどの他の交通手段といった「生活に必要な社会基盤整備」だと、より大きく定義したからこそ拡大してきたという背景があります。

 現在、各社が取り組んでいるDXは、新しく自社事業をDigitalにより再定義することです。しかし、DXが難しいと捉えられ、困難とされている原因は、過去の成功体験に固執した「マイオピア(近視眼)」が原因だと言えるのではないでしょうか。
 

経営視点からの、マーケティング機能の価値とは


 DX推進やパーパス経営など、なかなか変革が進まない原因が「過去の成功体験」にある場合、どうすれば良いのでしょうか。人材が豊富な海外では「過去の成功体験」を持つ人を入れ替えれば良いので、話は簡単です。しかし、労務法制などの制約によって人の入れ替えが難しい日本では、組織の中の一定数の人材に「適応」してもらう必要があります。

 ここでいう「適応」とは、新しい体験を基に新しい考え方や価値観を自分のモノとすることを指します。私個人の考えですが、こうした適応支援も「顧客の創造」の一環として、より大きく捉えることができると考えます。「新しい商流」「新しい価値」「新しい機能」「新しい営業スタイル」などは「新しい顧客の創造」に必要です。しかし過去の成功体験は、こうした新しい試みへの不信や否定的な感情も生み出してしまいます。

 そのため経営レベルでは、DXなどの新たな取り組みを「従業員にとっての新しい価値」として再定義し、従業員の態度変容を促すことが重要な意味を持つのです。

 ここで、ひとつお気づきでしょうか。

 今までのマーケティングの機能や知見が、社内の変革に対して意味を持つようになるのです。社内報のWeb化や広報誌の作成と配布、コンテンツマーケティングで得たノウハウによる新事業の記事制作、変革に対して慎重なキーパーソンへのインタビュー、パーパスの策定や採用ページへのメッセージ展開、社内外へのメッセージアウトの機会生成など、従来のマーケティングが持っていた機能を活用できます。

 現在、DXへの取り組みやパーパス経営を目指す企業は非常に増えています。しかし、日本企業においてそれを主導する経営企画部門に「適応支援」までの経験や機能を持ち、スコープとして視野に入れている企業は稀です。そこで、マーケティングが組織の「適応支援」に取り組むことにより、経営とのアラインメントが強固になり、その必要性の理解も進んでいくと考えます。

 マーケティングは、それ自体が目的ではなく、イノベーションと共に「顧客の創造」に必要な手段であることは間違いありません。また、さらなる成長を目指す組織や事業にとっての新大陸であり、成長余地となります。今まさに、日本独特の労務法制環境による「適応支援」を視野に入れた、日本のB2Bマーケティングの「脱近視眼」な在り方を考えるべきタイミングに差し掛かっていると考えています。

 今回のB2Bアジェンダでは、B2B企業が「マーケティング」を目的ではなく「顧客の創造」に必要だと気づかされるさまざまな体験を目論んでいますので、ぜひご参加ください。

 今年も、皆さまと会場でお会いできることを楽しみにしています。
 
 

B2Bアジェンダ2022 開催概要

 
名称
B2B アジェンダ 2022
日時
2022年10月12日(水)-13日(木) <1泊2日>
会場
THE HAMANAKO(ザ 浜名湖)
〒431-0101 静岡県浜松市西区雄踏町山崎4396-1
参加者
BtoB事業を行い、マーケティング起点での企業変革に取り組む経営者、役員。
B2Bマーケティングに従事するマーケター、営業企画、営業推進部門の管理職の方々など
参加費
B2B事業者枠:無料(審査有)
プレミアムB2B事業者枠:150,000円(税込165,000円)
パートナー枠:290,000円(税込 319,000円)
ハッシュタグ
#B2B22
主催
株式会社ナノベーション
特別協力
アジェンダノート(Agenda note)

B2Bアジェンダ 公式サイトは、こちら

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