マーケティングアジェンダ2022 レポート #05

なぜスターバックスの店員は良質なブランド体験を提供できるのか?【マーケティングアジェンダ2022レポート第3回】

前回の記事:
カインズがIT小売企業へ変貌できた「アメとムチ理論」【マーケティングアジェンダ2022レポート第2回】
  スターバックス コーヒー ジャパンは日本上陸から27年目を迎え、全国47都道府県に展開し、店舗数は1700店を超えている。そのブランドを形作っている大事な要素に「特別な顧客体験」がある。また、同社が広く支持されている要因のひとつに、日本独自の商品開発がある。コーヒー豆の調達はグローバルで統一しているが、期間限定メニューなどは日本で開発。特に季節限定のフラペチーノは、毎回SNSを中心に大きな話題となり、来店増加にも大きく寄与している。

 スターバックス コーヒージャパン 商品本部 本部長である加藤桜子氏をスピーカーに迎え、Preferred Networks執行役員 最高マーケティング責任者の富永朋信氏が聞き手を務めた「マーケティングアジェンダ2022」のキーノート「スターバックスックス商品開発責任者が追求し続けてきた『So What ?』とは」から、「パートナー」と呼ばれるスターバックスの従業員がブランドを形成していることと、「スターバックスらしさ」を生むパートナーのユニークな取り組みをレポートする。
 

パートナーの存在がスターバックスのブランドを形成する


富永 スターバックスから加藤桜子さんを招いて、スターバックスというブランド、その中でも商品開発において重要なパートナーの「So What?」について紐解いていきます。ちなみに、スターバックスでは従業員のことを「パートナー」と呼ぶので、みなさん覚えておいてください。では、加藤さん自己紹介をお願いします。
    
スターバックス コーヒージャパン 商品本部 本部長
加藤 桜子氏

加藤 私は新卒でウォルマートジャパン西友に入社し、約16年マーチャンダイジングの領域で仕事をしてきました。そして2019年にスターバックスコーヒージャパンに入社、現在では店舗やオンラインで提供しているビバレッジやフードなどの商品開発とプランニングを担当しています。

富永 ありがとうございます。では最初に私の方からアジェンダセット(議題設定)をし、その後、加藤さんとのセッションを進めていきたいと思います。

私はドミノピザ、イトーヨーカ堂など、これまで多くの企業でリテールマーケティングに携わってきました。その中で頻繁に「最も尊敬するリテールはどこですか?」という質問をされてきました。その質問に対して、私は昔から一貫して「スターバックス」と答えています。

スターバックスのコーヒーは美味しく、店舗の空間も居心地よいです。来店するたび、とても気持ちのよい経験ができるチェーンストアだと思っています。日本中に店舗を出していながら、どの店でも同じレベルの素晴らしい体験を提供し、他のリテールとは一線を画しているかなと感じています。

では、スターバックスがリテールとして素敵だと言われる、その魅力の源泉は何でしょうか。私は「パートナー」と呼ばれる店員の態度やコミュニケーションを通じて感じられる、そこはかとない気持ちよさなのではないかと思います。そのように考えると、スターバックスのブランドを作り出している最重要メディアやタッチポイント(顧客と企業の接点)は、パートナーではないかという気がしています。

そうすると、パートナーの接客や態度などがブランドの決まりごとと整合させる必要があります。しかし、ただでさえ品出しやレジ打ちなどの仕事で忙しいパートナーにとって、ブランドと意識統一を図ることは非常に大変です。一般的な小売企業では忙しさゆえに、ついお客さんと接することが2の次になってしまいがちですが、スターバックスの接客はそれと対極にあるのではないかと思います。

通常、社員にどのような行動をしてほしいかという規定は、「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」の3個目の「バリュー」にあります。スターバックスでのブランドイメージが店舗の隅々まで浸透しているのは、このバリューを通じてブランドの意思統一が徹底されていると、私からは見受けられます。そのように考えると、ブランドをつくっていくことと、MVVを徹底していくことは接近するのではないのでしょうか。

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